鋳物の街として栄え、吉永小百合が主演した映画「キューポラのある街」(1962年)の舞台ともなった川口。1964年の東京五輪で使われた聖火台は、川口の鋳物師が作ったものだという。地元育ちの80代男性は懐かしそうに語る。
「駅の近くは鋳物工場がたくさんあったけど、オイルショックの頃に鋳物産業が廃れてきてね。平成になってからかな。鋳物工場の跡地に大きなマンションが立つようになったんだよね。それで今は見ての通り、もうとにかく大きなマンションだらけ」
西口の公園にいた、昨年、近くのマンションを購入したという30代の夫婦は、
「ここにマンションを買った一番の理由は金額です。都内のマンションも検討したけど川を越えるだけで3割近く安かった。コロナであまり会社に行かない生活になりそうで、都内にこだわる理由がなくなったので、なら自然が残って子供が遊べる場所がある方がいいかなと。実際、スーパーも多いし、東口に行けば商店街があるし、暮らしやすいですよ。高速道路も近いし、電車で東京にも出やすいし」
としつつこうも付け加えた。
「ただ、今年に入って水道料金が25パーセントくらい値上がりしましたし、そごうの跡地も次に何ができるか決まっていません。川口市だけじゃないでしょうけど、コロナ禍での水道代値上げは非難ごうごうですよ。東口は路上喫煙とかたばこのポイ捨ても目立ちます。いい話題ばかりではないので、1位というのは住んでいる僕らもなんでだろうとは思います」
同じく、3年前に夫婦でマンションを購入し、育児休業中だという30代女性は、
「どこに家を買ったか、いちいちマウントを取りたがる知人もいて、なんで川口なのと嫌みっぽいことを言われたことがあるので、住みやすい街だよと言いやすくなったのはうれしいです。でも、高収入の若い人って私も違うし、ママ友にもいないかな。子育て世代でお金持ちの移住者を増やしたい市がイメージ作りで言ってるんじゃないですか」と苦笑いする。