駅近くの不動産会社の社員も「高収入の市民が増えた」という市長の主張には首をかしげる。
「高収入というのは……どのくらいの収入を指しているのか分かりませんが、ちょっと疑問です。住居費を安く抑えたいという意向があって、同じ値段を出すなら都内より部屋が広い川口駅でという若い人たちは、増えている印象はあります」
では、昔ながらの住民はどう感じているのだろうか。前出の80代男性はこう話す。
「あの大きなマンション(建設中の28階建てのタワマン)はもともと商店街だったんです。店がたくさんなくなってね。街の面影がなくなるから僕らの年代は寂しいだけだよ。仲間うちでは、そごうの跡地にもまたマンションが建つんじゃないかって話になってます。大賞は……まあうれしいけど、マンションだらけの街だからね。(アンケートしたのは)家を買うお金を貸す会社だから、いい街ってのを広めて、購買意欲をかきたてたいってことでしょ、違うの(笑)?。市長は市長で、京浜東北線しかない川口駅に中距離電車(湘南新宿ラインや上野東京ライン)を停めるってのを目指してるから、働き世代が増えているのをアピールしてなんとか実現したいんでしょう」
東口を歩くと、昔ながらの商店街のすぐそばで、巨大マンションの建設が進む。完成したら、光景は一変するだろう。
前述の80代男性のように街の変貌を寂しがったり、ランキングに懐疑的な見方をする住民が多いのも事実だ。
「いつか1位から落ちたら、住みにくくなったと思われそうで、それも嫌ですよね」(30代の飲食店員)
一気に注目度が高くなった街だけに、その受け止め方は人それぞれのようだ。(取材・文=AERA dot.編集部・國府田英之)