大学によるオウンドメディアやYouTubeの利用が活発化している。ブランディングはもちろん、大学の「知」の還元にも役立っている。AERA 2021年7月12日号「選ばれる大学」特集では、これらを駆使する立命館大学や中央大学を取材。「強み」はターゲットにあった――。
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ライトに発信できるのがツイッターなら、様々な角度から情報を配信できるのがウェブマガジンなどのオウンドメディアだ。ブランディングを高める効果も期待できる。
あえて立命館大学の名前を出さない──。それが、18年11月に立ち上がった立命館大学のオウンドメディア「shiRUto(シルト)」だ。配信数は21年6月時点で約200コンテンツ。1千人超という教員の専門分野を、その時々の社会課題につなげて記事を配信。これまで最も読まれたのは19年5月掲載の「日本でも“認められた安楽死”がある? 延命と死の自己決定を考える」(約18万PV)だ。
「日々の生活で疑問や課題が生じた時、ネットでキーワード検索をし、shiRUtoの記事を見つけ、課題解決につなげてほしい。『知』が集約する場が、shiRUtoの目指すところです」(広報担当者)
ターゲットとするユーザー層は、具体的に設定している。「30~40代」「インドア派だが、コロナ以降ジョギングが日課に」「理系ではないが、科学的根拠や解説は好む」といった風に、だ。これらは大学の志願者層とは重なっていない。しかし、総視聴回数ダントツトップのユーチューブをはじめ「立命館大学を知っている人、関心を持っている人」が支持する情報発信の場があるからこそ。これまで立命館大学と縁がなかった人へ、彼らの検索キーワードに引っかかる質の高いコンテンツを投げかければ、そこに立命館大学と明記されていなくても、大学の知名度が上がっていく。
■中高時代に「動画観た」
大学の公式ユーチューブの動画数、総視聴回数、登録者数を調査した兵庫県立大学環境人間学部准教授の井関崇博さんによれば、現在9割以上の大学がユーチューブを活用。志願者を増やすための動画が多数を占める中で、教養系の動画が少なからずあり、短尺が求められるユーチューブにおいて長尺でも視聴回数を獲得しているという。
「これは、大学が知の還元・共有という役割を果たしていることを表しているのではないかと考えられます」(井関さん)