尾身会長の提言はありがたかったというのだ。会見に同席した組織委の武藤敏郎事務総長も、
「会長と基本的な考え方としてはわれわれと思いをほぼ一つにしていると思います。尾身会長も開催ということを前提にお話をされたのでそういう意味で思いは一つであったというふうに思います」
と語った。
ただし、この尾身会長の提言はまだ英文に翻訳してIOCには伝えられていないという。
「IOCとは毎日のようにリモートの会談をしています。昨日も尾身会長からこういう提言があるということを報告しました。いただいた資料はまだ英文になっていませんけども、英文にしてお届けするというてはずを整えています」(武藤事務総長)
尾身会長と橋本会長とのバトルを予想していただけに、肩すかしを食らった感もある。
橋本会長はしきりに「3徹(てつ)の徹底」に取り組んできたことをアピールした。「3徹」とは来日人数の削減、行動・健康管理、医療体制の見直しの徹底のこと。
その「3徹」の一つである来日する大会関係者の人数削減に関しては、
「アスリートを除き、当初の14万1000人を約4万1000人にすることができた。このうちオリンピックファミリー(IOC委員ら)は3000人から1200人に削減されます。パラリンピックでは約3万6000人を1万2000人にする見込み」(橋本氏)
大会のために来日する選手以外の人の数を大幅に削減し、「オリパラ合計で当初の約18万人を5万3000人に。当初の数から3分の1以下に削減することができました」(橋本氏)
橋本会長は「安全で安心な大会が開けるエビデンスが揃ってきた」と述べるなど、会見で幾度となく「安全」「安心」という言葉を使った。
それにもかかわらず、観客数の上限はまだ決まっていない。前述のとおり、21日に開かれる5者協議で、「政府の方針を踏まえて観客上限の決定を行いたい」と説明した。
有観客だと感染拡大リスクがあり、安全安心と逆行しないかと質問された橋本会長。またもや「3徹」を持ち出し、海外からの来日する大会関係者の人数を当初の3分の1に削った成果を語るのだった。そしてこう続けた。
「安全というものが理解をされることによって、安心に少しずつ、つながって行ったかな」(橋本会長)
禅問答のようでもあった。
「(収容人数の)50%(以下)、(観客の上限は最大)1万人ということで、さらに厳しい条件を東京五輪・パラリンピックについては求められておりますので、そういったことも踏まえながら、よく協議をして決めていきたいと思います。