東京都建設局「宅地や事業所等に生じた浸水棟数・面積等の被害状況」をもとに、2011から現時点で判明している2018年までを調査。AERA6月7日号から
東京都建設局「宅地や事業所等に生じた浸水棟数・面積等の被害状況」をもとに、2011から現時点で判明している2018年までを調査。AERA6月7日号から

 逆流浸水が起きやすいのはどのような場所か。浸水リスクを調べる方法として最も一般的なのは「洪水ハザードマップ」だ。山村所長はこれに加え、周辺の土地と比べ低い場所や、曲がりくねった川のそばなどで起こりやすいと警鐘を鳴らす。

「19年10月に東日本に甚大な被害をもたらした台風19号で、川崎市中原区のJR武蔵小杉駅周辺が水浸しになりました。駅周辺は多摩川から1キロ近く離れていて、通常であれば浸水するような場所ではありません。しかし、武蔵小杉エリアは、かつて多摩川の支流が流れていた低地。多摩川の水が排水管を逆流して地上にあふれたのです」

水のうは手作りできる

 大雨が降ってから対策を取っては手遅れだ。

 山村所長が掲げるのが、まず室内の対策。電気のコンセントは漏電や感電の心配があるので、低い位置にある家電製品は浸水しても大丈夫な高所に移設してほしいとアドバイスする。

 浸水被害を最小限に食い止めるには、「土のう」や「水のう」が有効だという。玄関などの隙間や通気口などに置くことで、浸水のリスクを下げることができる。水のうは、トイレの便器の中に入れたり、洗濯機や風呂場の排水口の上にのせれば逆流防止にもなる。水のうは40~45リットル程度のごみ袋を2枚重ね、そこへ水10~15リットルほどを入れて、口を縛れば、手作りできるという。

「大雨が降ると、住宅周辺の側溝や排水溝が小枝や木の葉などで目詰まりを起こし排水できなくなって水害を起こすことがあります。大雨が降る前に隣近所や町内会などに声をかけ、側溝や排水溝を掃除する『防災大掃除』も大切です」(山村所長)

 高台やマンションの2階より上に住んでいるから水害の心配はない、などと安心してはいけない。今、高層マンションで「水害の怖さ」が再認識されている。

 先に紹介した台風19号では、JR武蔵小杉駅近くに立つ47階建てのタワーマンション(643戸)が、地下の配電設備への浸水によって停電、断水。2週間近くエレベーターは動かず、トイレも使えなくなった。マンションはオール電化のため住民への打撃は大きく、住民の多くが仮住まいを強いられた。マンションに留まっても、非常時用トイレに行くため高層階から階段で下りなければいけない住民もいたという。山村所長は言う。

「インフラが途絶えても大丈夫なように、高層マンションほど準備をしておかなければいけません。水や食料など、最低でも1週間分の備蓄が必要です」

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ベランダ浸水にも注意