次に、配信されている動画数のランキングを見てみよう。
1000本を超えているのは全国に3大学あった。1位は京都大の6042本。2位以下の大学と比較しても、その本数は突出している。
これは京都大が「オープンコースウェア」という特殊なチャンネルを運用しているからだ。05年から始まった試みで、実際に講義で使っている教材動画をアップロードしている。つまり、京都大の授業の一部はYouTubeで誰でも視聴できる。京都大は年間平均465本の動画を出している計算になる。
2位の慶應義塾大は1215本。専門的な知識を発信する長尺の動画を、2010年代初頭から積極的に発信している。「理工学部講義」シリーズや、「意識は幻想か?―『私』の謎を解く受動意識仮説」などだ。
「動画数は、各大学の動画への投資の程度を表しています。大学紹介のほか、授業やシンポジウムの動画なども多数公開されており、知の還元や学術交流に活用しています」(井関准教授)
たとえば中央大(動画数7位、707本)は、ケーブルテレビ局と共同制作した「知の回廊」という教養番組を多数アップしている。
「上位には国立大も少なくありません。予算の関係もあり、制作費はかかるけれども掲出費はかからないYouTubeを積極活用しているのかもしれません。また、国立は一定の知名度は既に獲得しているので、宣伝以外の目的での活用にも力を入れているのではないかと思います」(同)
いまや在学生がYouTuberとして大学を紹介することもある時代。大学のYouTube発信について、井関准教授はこう提言する。
「たとえば講義やゼミの様子は、学生YouTuberは配信しません。大学が公式に発信すべきは、具体性とリアリティーがある動画ではないでしょうか。見た目やイメージだけではなく、大学の実際の姿が伝わるような動画が求められていると思います。さらに、大学というよりも学問というものの魅力を伝え、学びに誘う動画を期待します。ただ、いまのスマホで動画を見る学生は、テレビのように30分の動画をゆったり見るという習慣はありません。動画のつくりはYouTube向けにカスタマイズしていく必要があると思います」
いかに大学の情報を学生や社会に伝えていくか、大学は工夫を凝らしている。母校のYouTubeチャンネルを見てみると、大学のいまがわかるかもしれない。
(文/白石圭)