写真家・山下晃伸さんの作品展「夜光性静物観察記」が5月25日から東京・新宿のニコンプラザ東京 THE GALLERYで開催される。山下さんに聞いた。
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広場に置かれた大型肉食恐竜のモニュメント、三州瓦でつくられたドラゴン、なんともいえない表情をしたガリバーのすべり台……。
展示作品に写っているのは、いわゆる「B級スポット」と呼ばれる場所ばかり。だがそれでいて、夜の街に一人たたずんでいるような、ゆったりと流れる時間が感じられ、心がやすらぐ。
ライトアップの華やかな光とは違う、何の変哲もない街路灯が照らす公園の遊具や、街に置かれたオブジェの魅力。
■そこにある光だけで撮る
山下さんはそんな夜の光、「夜光」に浮かび上がる被写体の不思議な世界観に魅せられ、14年前から全国各地を訪ね歩いてきた。
それをまとめたのが「夜光性静物観察記」と題された手のひらサイズの写真集シリーズで、これまでに7冊を出版した。
表紙写真の下にはサブタイトルが並ぶ。「公園のおもしろトイレ達」「星夜に吠える恐竜たち」「東京都足立区にある公園遊具達」「闇に浮かぶ獣たち」などなど(いちばん人気は、やはり恐竜ものだそう)。
そこに写っている被写体の面白さもさることながら、山下さんが長年こだわり続けてきたのが「夜光」。
「夜光というと、夜光塗料のようなイメージが強いですけれど、『そこにある夜の光だけで写した写真』と言いたくて、『夜光』という言葉を作品名に入れているんです」
ストロボをたくなど、そこにない光に頼るのは嫌なので、どうしても光がない場合以外は撮影にライトは使わない。
■目に飛び込んできた「恐竜」
ちなみに、夜の街でこのような遊具やオブジェを撮影するようになったのは必然だったという。
「撮り始めた当時は、東京工芸大学の4年生だったんです。授業で遅くなるから夜の写真を撮ることが多かった。学校帰りに新宿で人物スナップを撮るというのがお約束で、あのころは『新宿を撮る人』だったんですけど、いつの間にか『恐竜を撮る人』になっちゃいました(笑)」