――バラエティー番組を見られるようになったのは最近だと聞きました。
自分がいない戦場を見るのは怖いんです。番組が面白くても、面白くなくなっていてもつらい。もちろん優秀なスタッフと仲間が作っているので、絶対に面白いんですよ。そうなったときに「俺いらんやん」って。自業自得ですし、成立することもわかっているんですけど……。だから見られるようになったのは本当に最近です。
――あの記者会見から現在までにテレビ局からオファーはありましたか?
ないです。一度だけ地方のテレビ局からありましたけど、キー局からはないですね。「万が一なにかあったら」と考えたらオファーはできないでしょう。あの記者会見は前代未聞の大暴れでしたから。僕が吉本さんの立場だったら、全力で潰してますよ(笑)。そう考えると、いまの状況は生ぬるいくらいだと思います。
――後悔していますか?
後悔というか、相方に対しての思いはあります。もちろん迷惑をかけたこともそうですが、蛍原さんって実はめちゃくちゃ面白いんです。いまはMCとかやっていますが、関西のロケ番組とかだとめちゃくちゃなボケしますからね。それを僕がツッコむ。その面白さを全国ネットのテレビ番組で引き出せなかったのは本当に心残りです。僕の持論ですが、ツッコミは努力で、そのスキルを上げることはできますが、ボケはそういうわけにはいきません。そういう意味では蛍原さんのセンスって実はすごいんです。
――お笑い芸人としての「センス」ですか。
例えば、僕はいわゆる大喜利とかそういうのは苦手なタイプなんです。だからあんまり出なかった。そういう芸人って何人かいるんです。ネタとかトークは面白いけど大喜利は苦手という芸人。大喜利である程度の笑いをとることはできても、「IPPONグランプリ」に出ている芸人のような切れ味鋭いことは言えない。それこそめちゃくちゃ売れてる芸人でいえば、ナインティナインの岡村(隆史)とかもそうですし、今田さんや東野さんたちも、あまり大喜利はやらない。でもみんな大喜利の答えが面白いかどうかという判断はできるんですよ、でもその答えを導き出す能力はないという。そういう意味で松本(人志)さんとかは、もう別次元ですから。
――お笑い芸人として松本人志さんや明石家さんまさんにはかなわない。
全然無理ですね。知れば知るほど無理です。もちろん、若手のとがっていた時期は「ダウンタウン、明石家さんまに勝つんや」という思いでやっていました。天然素材で人気が出て、「ワンナイR&R」で盛り上がって、「アメトーーク!」が始まって、その時々で「これいけんちゃうか」と一瞬思ったりはする。でも、一緒にお仕事をさせてもらうと「あれ、前より背中見えへん」と気がつくんです。自分に実力がつけばつくほど、その差をはっきりと認識させられる。「ああ、この背中は一生触ることすらできない」という距離感です。
――それはテレビではなくYouTubeという戦場でも同じですか?
別の可能性というか、YouTubeやったら「背中触るくらいは」と思っているわけではなくて、「おっ」と思わせることくらいはできるかなとは思います。(後編へ続く)
■みやさこ・ひろゆき/1970年生まれ。大阪府出身。お笑い芸人。YouTuber。2020年1月に開設したYouTubeチャンネル「宮迫ですッ!【宮迫博之】」のチャンネル登録者数は約140万人。5月23日20時から同チャンネルでYouTube史上初の大型料理番組がスタート。ミシュランの星を持つ凄腕シェフと新進気鋭の若手シェフが、超豪華セットで異次元の戦いを繰り広げる。YouTubeの領域を超えた超豪華メンバーも出演。
(AERA dot.編集部)