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 写真家・大山行男さんの作品展「インド 知らない街を歩く」が4月29日から東京・新宿のリコーイメージングスクエア東京で開催される。大山さんに聞いた。

【大山行男さんの作品はこちら】

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 久しぶりに富士山のふもと、朝霧高原にある大山さんのアトリエを訪ねた。

「富士山とインドのつながり……それは、どこにあるんでしょうね?」

 大山さんはそう言うと、いたずらっ子のような目で笑った。

「富士は究極の聖山。インドは究極の俗。両方とも究極なんですよ」

■「大山の富士山」をインドでぶっ壊す

 大山さんが富士山麓に移住してからすでに30年以上になる。今回の写真展に合わせて出版する写真集のプロフィルにはこうある。

<1952年神奈川県生まれ。富士山の写真では第一人者。富士山に関する展覧会、写真集は、数えきれないほど多数>

 そんな大山さんがなぜ、まったくの畑違いとも思えるインドを写しているのか。

「富士山だけをずっと撮り続けていると『危ないぞ』と。富士山はね、毎日見ていると、見えなくなっちゃうんですよ。富士山がわからなくなってしまう。絶対にまひしちゃうんだけれど、自覚症状がない。だから、インドっちゅう離れたところに行って、自分の立ち位置をつかみ、また富士山を見る」

 さらに、「『大山の富士山』のイメージをインドでぶっ壊す」とも言う。

「写真家というのは、どこまで自分の幅を広げられるか、ですよ。だから何でも撮る。いまのスタイルを変えたいんですよ。狭いところに閉じこもって、富士山でいいんだ、なんて、慢心はしていませんから。いろいろなことをやるということです。どんどん世界を広めていく。それが一つの大きなテーマです」

 つまり、そういう理由で、インドに行ったわけですか? と、たずねると、「そういう理由になっちゃったんですね。最初はそうじゃなかったんだけど」と、ちゃめっ気たっぷりに答える。

■戦後の混乱期のような強烈な光景

 12年前、「カミさんの還暦祝いで、ちょっとインドに行ったんです。瞑想でもしようかと」、インド南部のチェンナイ近郊にある寺院を訪ねた。

 行きは飛行機だったが、「味気ないから、バスでニューデリーまで帰ろうや、という話になったんです。それで、行けるところまで行ってみようと、乗ったのが見事なローカルバス」。

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取り残されたような庶民が暮す街