東京大学工学部を卒業後、大工として建築会社に勤務していた栗林煕樹さんは、結婚後、一念発起して大工を辞め、東大理科三類を再受験し見事合格。現在は2度目の学生生活と子育てに励んでいます。
前編では、1度目の東大入学から、大工として仕事をする中で学んだことについてインタビュー。後編となる今回は、結婚、子どもの誕生を経て、東大理三を再受験することを決意した理由や、現在の生活について語ってもらいました。さまざまな経験をしてきた栗林さんの話から、人生設計のヒントを探ります。(東大新聞オンラインから転載、一部抜粋・改変)
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■大工の仕事の傍ら、医師になることを決意
──東大卒業後、建築会社で大工として働いていましたが、その後再受験を決断したきっかけは何ですか
再受験を考え始めたのは、社会人2年目の終わりくらいの時期でした。当時は空き時間に読書や勉強をして雑多に知識を吸収していたという感じなのですが、本当に自分の時間がないなと思っていました。最初は漠然と勉強をしたいという思いで、その後「自分は何が勉強したいのだろう」と考え、昔から「人間とは何なのか」「自分とは何なのか」ということに意識があったことに気付き、それらについて自分が生きているうちに学術的な研究の結果などとして明らかになることは分かってから死にたいなと思うようになりました。一方で当時既に自分には家庭があったので、現実的に自分の興味を将来的に仕事につなげるためにはどうすれば良いか考えた結果、医学部に入り精神科の医師になろうと決めました。
──自分の学問的な興味の追求と生活のためにお金を稼ぐことを両立するための職として医者を選んだ理由は何ですか
就活時の考えと近いかもしれません。やはり、自分が何をしていて、誰の役に立っているのかが直感的に分かる仕事が良いなと思っていました。それに加え、大工の経験から家を建てることは比較的裕福な人のための仕事だと感じており、それはそれで重要であるものの、自分は困っている人を助ける仕事に携わりたいなと思っていました。ただ、困っている人を救う仕事は低賃金のものが多い印象があり、家族を養うためにはある程度稼げる仕事が良かったので、折衷案として医者に決めました。