巨大なカメラの持ち運びは「引っ越しをやっているみたい」
このサボテンを撮影したアリゾナ州は「住み慣れた場所」と言う。
90年代、三好さんはメキシコ国境近くのツーソンで7年間暮らし、いまも取材の際はこの街を拠点にしている。
「知人宅に三脚やフィルムホルダーなどの撮影用具を預けていますから、そこから旅をする。シカゴまで行ったりしますけれど、帰りも必ず、ツーソンに寄ってから帰国するんです」
大変なのは巨大なカメラの持ち運びで、「引っ越しをやっているみたい」。
カメラの重さは約17キロ。ピント合わせのスクリーンはテレビ画面のようだ。それを載せる三脚も巨大で、こちらは約10キロ。
私はちょうど2年前、三好さんの桜撮影に同行したことがある。
写したのは島根県浜田市にある「三隅大平桜」。推定樹齢約660年。根元周囲は約5.4メートル。ヒガンザクラとヤマザクラの性質を合わせ持つ巨木だ。
駐車場から桜までは離れていたため、台車にカメラ、レンズ、三脚、フィルム、脚立と、かなりの量の撮影機材を載せ替えて数回往復した。
カメラを組み立て、三脚に据えたものの、季節外れの雪で撮影は難航。けっきょく、2日がかりの作業となった。
撮影が終了し、桜の所有者にあいさつをした際、「なぜ、いまの時代にフィルムで撮るんですか?」と、たずねられた。すると、三好さんはこう答えた。
「いま、大事なものは撮って残しておかなきゃいけない。何百年も残るんですよ。写真にしておけば残る。デジタルデータだといつなんどきなくなっちゃうかわからない。自分も歳をとったんですね。若いときはただ、飛んで歩いているだけで、そんなことは考えもしなかったんですけれどね」
(文・アサヒカメラ 米倉昭仁)
【MEMO】三好耕三写真展「SHASHIN 写真」
キヤノンギャラリー S(東京・品川) 3月22日~4月28日