鳴子、Miyagi 2009(左)、Tucson, AZ 2019(撮影:三好耕三)
鳴子、Miyagi 2009(左)、Tucson, AZ 2019(撮影:三好耕三)
巨大なカメラの持ち運びは「引っ越しをやっているみたい」

 このサボテンを撮影したアリゾナ州は「住み慣れた場所」と言う。

 90年代、三好さんはメキシコ国境近くのツーソンで7年間暮らし、いまも取材の際はこの街を拠点にしている。

「知人宅に三脚やフィルムホルダーなどの撮影用具を預けていますから、そこから旅をする。シカゴまで行ったりしますけれど、帰りも必ず、ツーソンに寄ってから帰国するんです」

 大変なのは巨大なカメラの持ち運びで、「引っ越しをやっているみたい」。

 カメラの重さは約17キロ。ピント合わせのスクリーンはテレビ画面のようだ。それを載せる三脚も巨大で、こちらは約10キロ。

島根県浜田市で三隅大平桜を16×20インチ大判カメラで撮影する三好さん(撮影:米倉昭仁)
島根県浜田市で三隅大平桜を16×20インチ大判カメラで撮影する三好さん(撮影:米倉昭仁)

 私はちょうど2年前、三好さんの桜撮影に同行したことがある。

 写したのは島根県浜田市にある「三隅大平桜」。推定樹齢約660年。根元周囲は約5.4メートル。ヒガンザクラとヤマザクラの性質を合わせ持つ巨木だ。

 駐車場から桜までは離れていたため、台車にカメラ、レンズ、三脚、フィルム、脚立と、かなりの量の撮影機材を載せ替えて数回往復した。

 カメラを組み立て、三脚に据えたものの、季節外れの雪で撮影は難航。けっきょく、2日がかりの作業となった。

 撮影が終了し、桜の所有者にあいさつをした際、「なぜ、いまの時代にフィルムで撮るんですか?」と、たずねられた。すると、三好さんはこう答えた。

「いま、大事なものは撮って残しておかなきゃいけない。何百年も残るんですよ。写真にしておけば残る。デジタルデータだといつなんどきなくなっちゃうかわからない。自分も歳をとったんですね。若いときはただ、飛んで歩いているだけで、そんなことは考えもしなかったんですけれどね」

                  (文・アサヒカメラ 米倉昭仁)

【MEMO】三好耕三写真展「SHASHIN 写真」
キヤノンギャラリー S(東京・品川) 3月22日~4月28日

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