「RINGO」大鰐、Aomori 2014(撮影:三好耕三)
「RINGO」大鰐、Aomori 2014(撮影:三好耕三)

これまでと同様の写真展を開くことができないのはわかっていた

 そんな三好さんは今回の写真展の経緯について、こう話す。

「キヤノンからの展示リクエストは、けっこう前からあった『らしい』んですね」

――その、「らしい」というのは、どういうことですか?

「そういう声が人を介して何度か聞こえてきて。もちろん、私の仕事を知ったうえで、言ってこられたわけですけれど。それで、最終的に直接、お話したのは2年くらい前かな」

 今回は、これまでと同様に銀塩プリントの作品だけで写真展を開くことはできない、ということはなんとなくわかっていたという。

「それで、半分は従来の作品を展示して、もう半分は私のプリントをスキャンしてキヤノンの製品で出力したもので展示をするのであれば、と返事をしたら、OKが出て、『それじゃあ、お願いします』ということになったんです」

――会場には銀塩プリントと、インクジェットプリンターによるデジタルプリントが展示されるわけですが、それはどう分けたんですか?

「うーん、なんて言ったらいいのかなあ。『写真』であって銀塩でしかできないものは『出力』にはしなかった」

Wendover, UT 2019(撮影:三好耕三)
Wendover, UT 2019(撮影:三好耕三)

「本来であれば、新作として発表する写真もあえて出します」

 デジタルプリントはすべて短辺が約120センチの大型のもので、そのほとんどはオリジナルの銀塩プリントをスキャンしてデジタルデータ化し、出力したもの。ただ、2点だけ、ネガからデジタル化した作品があるという。

「10年ほど前に、ある会社から16×20インチのネガスキャンをしてみたい、という申し出がありまして、そのときの画像データが手元にあったんです」

 その仕上がりはプリントをスキャンしてつくり上げたものとは「全然違う」と言う。「シャープネスやクリアさがけっこう面白い感じになりましたね」。

 ちなみに、デジタルプリントの展示は、「銀塩プリントとの融合とか、対比とかではなくてね。『これはこれ』、という展示にしたいんです」。

 会場には80年代から90年代にかけて大根を撮影した「ROOTS」シリーズも飾られるが、ほとんどは2000年以降に撮影した作品で、2年前にアメリカ西部で写した最新作のサボテンや、乾いた塩湖で写した車もある。

「こんな展示の機会を与えられたら、そこで何かチャレンジしなきゃ面白くないじゃないですか。それで実は2年前から16×20インチの大判カメラを持って、またアメリカを旅し始めたんです。本来であれば新作として発表しなくてはいけない写真もあえて出します」

 それは三好さんにとって「足かせ」のようなものと言う。

「これからどんどん体力的にも大変になるけれど、『お前はもう始めたんだから、やんなくちゃいけないよ』、みたいな」

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