「僕は普通じゃないから」。そう言い切るには理由がある。デビュー40周年を迎えても、創作への意欲が劣ることは全くない。佐野元春に独占インタビューしたAERA2021年3月8日号から、時代を作り続けた彼の声を届けよう。
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──記念コンサートは3月13日の日本武道館、4月4日の大阪城ホールの2夜限りだ。
佐野元春(以下、佐野):バンドもスタッフも、こうした状況の中でのコンサートですので、感染予防を完璧にしてしっかり臨もうと思っています。体調もばっちりです。
■いつもよりフラット
──この間、ファンを勇気づける新作も届けてきた。あたたかみのあるメロディーに言葉を乗せた「この道」や、コロナ後の社会に希望を見いだす「合言葉─Save It for a Sunny Day」だ。
佐野:僕としては、ソングライターとして日々、自分の思うこと、感じたことを言葉にして、音楽にして、ファンに届けるということをやっています。どういう状況であれ、淡々とそれをやるのが僕の仕事だと思っています。ですので、それらの曲もそうした中から出てきたものです。昨年12月のコンサートで初めて披露しましたが、とても好評だったように感じます。
──昨秋発表されたベスト盤に新作として唯一収められた「エンタテイメント!」も、最近発表された曲の一つだ。コロナ前の作品だが、その後考えさせられた「エンタメの持つ力」について触れられている。
佐野:その辺はとても複雑な思いがあります。うまく言葉で表現できないので、「エンタテイメント!」というロックンロールに全てを表現してきました。
──40年の歴史の中で表現者として圧倒的な実績を残してきた。2019年発売の「或る秋の日」も注目だ。ファンが驚いた異色の作品となっている。
佐野:この5年間、スタジオアルバムを「佐野元春&THE COYOTE BAND」名義で4枚リリースしていますが、そのアルバムのアウトテイクを集めています。というのは、バンドでリリースしているアルバムは、バンドサウンドを前面に出したロックンロールアルバム。なので、「或る秋の日」で聴いていただいているようなシンガー・ソングライター傾向の曲はなかなか入れづらかった。
かといって、悪い曲ではないので、ファンに楽しんでもらいたいというところから「或る秋の日」が成立したんです。力みはなく、いつもよりフラットな気持ちで制作しました。ただ、佐野元春のシンガー・ソングライター傾向のアルバムというのは、当分はないと思います。