と思ったのだが、三千回使用可能と書いてあったのを見て、ああ、なるほどと納得した。

 サイトではS・M・Lのセットだと、単品で購入するよりも五百円安かったのでクリアを購入した。サイトのレシピを見ると、電子レンジで和食も煮物もスイーツも作れるという。使ってみなくてはわからないので、電子レンジは使わなくていい、湯煎で作れるココア風味の蒸しパンを作ってみた。

 材料は二人分でホットケーキミックス百グラム、ココアパウダー大さじ三、水七十シーシー、マヨネーズ大さじ一、これだけである。まず鍋にたっぷりの水を沸かしておく。スタッシャーに粉類を先に入れて、よく振って混ぜる。次に水とマヨネーズを加え、今度は手で揉みながら混ぜる。混ぜ合わさった生地を袋の下のほうにまとめて、中の空気を抜いて口を閉じ、十五分湯煎すれば出来上がる。途中、余裕があったらスタッシャーの向きを変えるとよりよいとのことだ。

 私が試して作った感想は、

「ちゃんとできる」

 ということだった。ただし袋に厚みがあってしっかりしているので、中に材料を入れて手で揉むよりも、ボウルなどで混ぜ合わせておき、それをスタッシャーに入れたほうが、最終的にはきれいな形になると思う。ただし洗い物が増えるので、節水の面ではなるべく袋一つで作ったほうがいいのだが。型に入れずに袋に入った形、そのまんまが蒸しパンの形になるので、混ぜ合わせた後、裏側にくっついた生地をきれいに落としておいたほうが、見栄えがよくなる。

 また、密閉力がとても強いので、湯から引き上げてしばらくおいて、少し温度を下げてから開けた方が火傷の心配がない。私は気が急いていたものだから、すぐに開けようとしたが、あまりにしっかりくっついているのと、熱いのとで火傷しそうになり、あわあわしながら開けるのはやめて、しばし放置して開封した。

 ホットケーキミックスにもよるのだろうが、私は甘味が添加されていないココアパウダーを使ったので、甘味が強くない大人の味になった。もうちょっと甘味が欲しければ、自分で加えればいいし、ココアパウダーを入れずに、レーズンやナッツを入れてもできるのかしらと考えている。蒸しパンの基本形で、ここからいろいろとアレンジできるかもしれない。湯を沸かし、一度、混ぜてしまえばあとは十五分間放置して、時折、様子を見れば大丈夫なので、とても楽だった。電子レンジを持っている人だったら、肉でも魚でも野菜でも、これに入れたままおかずの調理もできるようなので、とても便利だろう。焼かない豚肉の生姜焼きや、チーズリゾットなど、こんなものまでできるのかと驚かされる。下ごしらえも調理も、この袋ひとつでできるところが、洗い物の手間が軽減される利点だろう。

 たしかに便利だけれど、電子レンジがない我が家では、この商品の利点を最大限に活かせない。しかし湯煎調理をするときに、

「大丈夫かしら、何か変なものがしみ出てきてないかしら」

 と、どきどきするような心配がないだけでも助かる。肉や魚が入れられ、そのままオーブンの中で焼けるところもいいのだが、うちには食洗機もないので、生の肉や魚を入れた後の袋の洗浄が、手洗いで大丈夫なのかどうかが心配なのだ。

 いまどき電子レンジがないなんてと、何十年も前から驚かれたり、友だちには、

「使いたいときはうちのを使って」

 といってもらったりしているが、必要だと思ったことはほとんどない。かぼちゃを切るときだけ、あればよかったなとは思うが。便利に使えるものが発明され、それを便利に使うためには、それ相応の生活環境が整っていないとだめだということらしい。スマートフォンを使いたいと思っていても、環境が整っていないと使えないのと同じである。私の場合は、自作の一年から二年使えるビーズワックスラップは問題なく使える。三千回使えるスタッシャーは肉や魚を入れない限り、こちらも便利に使えるだろう。いずれにせよこれからは、できる限りプラスチックを遠ざける生活にしていきたい。

※『一冊の本』2020年3月号掲載

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