写真家・佐藤圭太の作品展「トーキョーリアリティ」が12月11日から東京・銀座のソニーイメージングギャラリーで開催される。佐藤さんに聞いた。
佐藤さんに東京のイメージをたずねると、「キラキラ、きらびやかで、モノにあふれて」と、返ってきた。
なんだか、バブル世代みたいだけど、氷河期世代の40歳。東京生まれ。しかし、思春期を東北地方にある父の実家で過ごした。そのとき、「東京にものすごく憧れた」。
「その憧れがあまりにも大きすぎちゃって、東京に戻ってきたときに、『あれ? そうでもないな』というギャップを感じた」。そして、困惑した。その思いをずっと引きずってきた。
「あのときの妄想がすごくって、いまでも東京の近未来的なイメージに無意識のうちに引かれてしまうんです」
2年前の個展「unvirtual TOKYO」では近代的な建物の形状を追い求めた。そして今回は人工知能(AI)や仮想現実空間(VR)をテーマとする。
作品には人間型ロボットが受付をするホテル、デジタル空間をウリにしたアトラクションパーク、コンピューターが管理する屋内菜園、無数のインスタグラムの投稿が写し出された壁面などが登場する。
無機物と有機物、人間とAIという世界観、現実感と非現実感。リアリティーがあるのか、ないのか、わからないような不思議な東京というイメージ。
「写っている人はリアルなんだけれど、VRを見ている本人は違う世界に行っちゃっている。スマホの画面を見つめている人は同じ空間にいるのに別の世界とつながっている。そういうのが面白いな、と思って」
在学中ずっと考え続けた「自分の表現って何?」
佐藤さんが東京を撮り始めたのは大学時代。小さなデジタルカメラを手に入れ、夜景を写し、「きれいなものがきれいに撮れたなと、単純に感動していた」。
卒業後は市役所に就職したものの、「写真を本気で学んでみたい、という気持ちが強くなって」、27歳のときに退職。写真専門学校に通った。
「思い切りましたけれど、よかったです。それまで表現としての写真というのをまったく知らなかったんです。それを一から学ぶことができましたから」
入学すると、どんな写真を撮っているのか、授業でたずねられた。夜景の写真を先生に見せた。
「そうしたら、『これは表現じゃないよ』『きれいだけど、ここにはお前の主張、着眼点が何もない』と言われて、『えっ、何それ?』と、思った。それから在学中はずっと、自分の表現って何だろう? と考えながら撮り続けましたね」
そもそも、自分は何に興味があるのか? 気になる対象は何でも撮ってみた。東京の下町も訪れた。その結果はどうだったのか?
「ちょっと情緒が出すぎちゃって。というか、平凡な写真だったと思うんです。ぐっとこない、というか。これをまとめる、というのはないな、と」