高齢になり車を運転できなくなると、都市部でも買い物が難しくなる。過疎地ではなおさらだ。そうした人たちを支援しようと、ドローンなど先端技術を活用した取り組みが各地で進んでいる。
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長野県南部の伊那市は南アルプスと中央アルプスに囲まれている。天竜川や三峰川が流れ、自然豊かな地域だ。面積約668平方岐路メートルと東京23区より広い。一方、集落が点在し、買い物が困難な人が少なくない。
伊那市は買い物を支援するため、ドローンによる配送事業を全国の自治体に先駆けて取り組んでいる。伊那市の担当者は導入の経緯をこう話す。
「住民にアンケート調査をすると、中山間地は移動に時間がかかるうえ、高齢化が進んでいるため、お店もなくなってきている。移動販売車も週に1回くらいしか回ってこない」
そこで、伊那市はすぐに商品を届けられるドローンに目をつけた。
ドローンの飛行に必要なモバイル通信ネットワークや決済システムなどを提供するKDDIのほか、河川上空などの飛行の安全性を確かめるためにゼンリンも協力した。2020年8月に空飛ぶデリバリーサービス構築事業として、「支え合い買物サービス」を始めた。開始からの1年間で延べ約5400の商品を届けたという。
伊那市では、過疎地や中山間地域などで車を運転できない住民が市街地へ出かけるときの手段として、乗り合いバスのサービスを提供してきた。しかし、使い勝手が良くないなどの理由から、利用者は少なかった。
そこで、小回りが利くなど利便性を高めた「ぐるっとタクシー」を導入した。複数の乗客が乗り合う際に、どの経路を通って運行するのが最適になるか、“AI(人工知能)”を使って配車するという。
このタクシーで市街地に出かけて、実際に商品を見て買ってもらうほか、「足りないものをドローンで注文してもらう」(市担当者)という二段構えの買い物支援を展開している。