■薬物に頼らない改善方法が理想
「高体温にはウイルスを減らす効果がある。熱を下げると一時的に体は楽になりますが、かえって治りが遅くなるので解熱剤として使ってはいけません。頭痛がひどいときだけ非ピリン系鎮痛剤のアセトアミノフェン(カロナールなど)を服用し、一気に平熱まで下げないこと。関節痛の場合、薬の半減期が40~50時間の長時間作用型は効果が持続することがメリットとされていますが、それだけ副作用の害も出やすく、特に高齢者には危険です。半減期が14時間くらいのナプロキセンのほうが適切です」
「生活習慣病」の糖尿病や高血圧、高コレステロール血症は、そもそも「正常ではない」と診断される基準値が厳しすぎるという問題点があり、安易に薬が処方されやすい。
糖尿病(2型)は、失明の大きな原因である網膜症、腎症、心筋梗塞などの合併症が心配。治療には血糖値を下げるさまざまな薬が使われているが、長期的な血糖の状態を示すヘモグロビンA1cは、基準値(4.6~6.2%)まで一気に下げると危険だという。
「低血糖になるほうが怖い。動悸、震えなどの症状が表れ、重症化すると昏睡状態になります。インスリンを補って、ヘモグロビンA1cを7~8%の範囲で緩やかにコントロールするべきです。程度に応じた糖質制限食を基本としてインスリン分泌量を減らし、十分な睡眠とストレス解消を心掛けるなど、薬剤に頼らない改善法が理想です」(浜医師)
血圧もかねて「正常ではない」と診断される範囲が厳しすぎるとの指摘があり、治療の必要のない人にも薬が処方されがちだ。日本高血圧学会は正常血圧の範囲を、収縮期120mmHg/拡張期80mmHg未満とし、140/90以上だと高血圧と診断される。浜医師がこうアドバイスする。
「高齢になれば血管が硬くなるので、血圧を上げることで組織に十分な血液を供給している。下げすぎはかえって危険です。英国のガイドラインでは、160/100未満ならば降圧剤は不要。降圧剤をどうしても使わざるを得なくなったら、比較的安全なACE阻害剤か利尿剤の中から1種類だけ使うことを勧めます」
血液中のコレステロールが多いと、動脈硬化の原因になるといわれている。総コレステロールの基準値は130~220(mg/dl)だ。「悪玉」と称されるLDLコレステロールが140以上だと、脂質異常症と診断される。浜医師が言う。
「いまやコレステロール値が高めの人のほうが長生きだということがわかっている。免疫力が弱まるので、無理に下げる必要はない」
(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2022年7月15日号より抜粋