新型コロナウイルス感染症の流行で、外出自粛による受診控えや、治療の中断を余儀なくされた人もいるだろう。
持病を放置してはならないが、飲む必要がない人にまで薬が出されることも少なくない。薬には副作用があり、特に慢性疾患の場合は薬の処方が長期化し、別の疾病を引き起こすこともある。
医薬品に関する調査・研究を行っているNPO法人「医薬ビジランスセンター(薬のチェック)」理事長で内科医の浜六郎医師はこう指摘する。
「薬剤によって、糖尿病や高血圧など治療目的の病気(合併症)を減らす効果があっても、がんなど別の病気が増えて死亡者がかえって増えることがあります。治療の評価項目として、私たちが最も重視しているのは別の病気による死亡も含む『総死亡』です」
人を対象とする臨床試験の多くは数カ月から5年程度行っているが、慢性疾患用の薬剤は10年以上服用することも少なくない。つまり、臨床試験では薬を長期間服用した場合に起こり得る「害」はわからないのだ。
浜医師がここで例に挙げるのは糖尿病の治療用の薬である「SGLT2阻害剤」だ。腎臓からブドウ糖を排出させ、血糖値を下げる作用がある。
「SGLT2阻害剤は動物実験で発がん性が疑われ、長期的に使えばがんによる死亡が増える可能性があるが、試験はごく短期間しか行っていません。尿量も増えて脱水症状を起こし、脳梗塞を起こしやすくなります」
浜医師らは、ランダム化比較試験を適切に行っているか、被験者に偏りはないか、症例報告や観察研究、動物を対象とした毒性試験データなどを総合的に分析した結果、使うとかえって害があったり、あまり効果が期待できなかったりする薬をまとめた。
コロナ禍で、家庭でも使える初めての飲み薬として期待されたモルヌピラビルは、初期データでは入院・死亡リスクを半減させると発表されていたが、最終データでは有効性が約30%にとどまった。
浜医師は臨床試験が適切に行われなかった疑いも指摘する。糖尿病や慢性腎臓病などコロナが重症化する危険因子がある被験者が、プラセボ(偽薬)群よりモルヌピラビル投与群のほうが約40%低かったことがわかったという。
風邪などで発熱すると、解熱剤として処方されるのが、非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)だ。浜医師がNSAIDsなどで解熱するときに注意すべき点を語る。