ふんどしは機能だけのものではなかった。

「軍隊は軍服、洋食など生活に関しては西洋を追いかけ続けたけれども、ふんどしには最後までこだわりました。朝鮮半島や海南島の現地採用の兵士にふんどしを配布していますから、やはり大和魂が宿りうる軍の象徴だったのだと思います」

 それなのに日本画家の山口華楊はパンツをはいた戦闘機の整備員を描いた。ふんどしをあえてパンツに変えた可能性を井上さんは指摘している。

 今回は日本に絞ったが、地球規模のテーマだ。アマゾンの奥地には赤ふんを日常着とする部族がいて、高床式の家のはしごが伊勢神宮で神様に食事を供える御饌殿(みけでん)にそっくりなのだそうだ。

「研究者の多くは興味本位と言われることをいやがって自分の研究には意味があるという弁明に力を尽くさはる。もったいないなあと思うんです」

 興味本位上等の井上さんが新たな日本の近現代史を見せてくれる。(仲宇佐ゆり)

週刊朝日  2022年7月15日号