photo (c)ガーラフィルム/ノンデライコ
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 大人たちは手出しをせず、ギリギリまで見守る。あのナタのシーンは僕も撮りながらハラハラしましたが(笑)。でも子どもって弱い存在じゃなく、その環境さえあれば自分の足で育っていける。ゆめパのスタッフはそうした子どもたちの力を信頼しているんです。

 ただ虫のケンカをジーッと見ているだけに見えても、子どもたちは実はすごく哲学的なことを考えていたり、潜在的に学んだりしている。異年齢が集うなかで無意識に刺激し合い、進路について考え、勉強を始める子もいます。やりたいことを邪魔されずに自分にとって必要な時間を十分に過ごす。ゆめパにある「じかん」は豊かですごく大事なものだと感じました。

photo (c)ガーラフィルム/ノンデライコ
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 僕自身も中学時代、半年ほど学校に行かなかった時期があったんです。親に反発してちょっとグレたりもした。中学を卒業してすぐ社会に出て、思い返すと職場や専門学校などさまざまなコミュニティーを転々としてきた気がします。ゆめパは僕にも居心地がいい場所でした。でもこういう場がない親も子も大勢いる。見た方から「やっぱりこういう場所いいよね」「必要だよね」という声があがって、こうした場作りがもっと波及したらいいな、とも思っています。(取材/文・中村千晶)

重江良樹監督/1984年、大阪府生まれ。大阪・釜ケ崎の児童館を舞台にした「さとにきたらええやん」(2016年)で平成28年度文化庁映画賞・文化記録映画部門優秀賞など受賞。9日からポレポレ東中野ほか全国順次公開
重江良樹監督/1984年、大阪府生まれ。大阪・釜ケ崎の児童館を舞台にした「さとにきたらええやん」(2016年)で平成28年度文化庁映画賞・文化記録映画部門優秀賞など受賞。9日からポレポレ東中野ほか全国順次公開


AERA 2022年7月11日号

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