動物写真家の前川貴行さんが、世界各地で出合った野生動物をまとめた写真集『SOUL OF ANIMALS』(日本写真企画)を出版した。
本書は写真雑誌「フォトコン」(同)で2011年から今年まで通算約7年にわたる同名のフォトエッセーを編んだもの(現在も連載中)。A5判、304ページに写真と文章が収められている。手にすると小版型ながらも黒を基調としたデザインと相まって、ずっしりとした重みが伝わってくる。
これまで大型の写真集を出してきた前川さんにとって、このようなスタイルの本を出すのは初めてという。
「小さなサイズで分厚い本にしよう、というのは藤森邦晃編集長のアイデアなんですが、写真集として作品を見てもらえるだけでなく、読み物としても楽しんでいただけるしっかりとした本にしました」(前川さん、以下同)
見開き写真にエッセーを綴った一話完結の構成なので、気の向くままにページをめくり、どこからでも気軽に読めるのが楽しい。
新しい動物がぽんぽん撮れるわけじゃない
ソフトカバーの表紙に指をかけ、パラパラと300超のページを一気にめくってみる。よくもまあ、これだけの動物を撮ったものだ。ホッキョクグマ、マウンテンゴリラ、オジロワシ、ザトウクジラ……。計76種。
これまで、さぞかし多くの国を訪れたと思いきや、「15、16カ国くらいじゃないですか」。意外と少ない。(写真集では全部で12カ国)。
「動物写真って、ぽんぽんと新しいものが撮れるわけじゃないんですよ。だから、同じ地域を繰り返し訪れる。例えば、ボルネオ島にオランウータンの撮影に行くにしても1回では終わらなくて、何回も通って写真を撮りためていく」
次々と現れる作品からは「この動物を見てみたい、写してみたい」という、真っすぐな子どものような好奇心が伝わってくる。密猟者に殺され、茶色い骨になったマルミミゾウなど動物保護区の裏側の風景も写しているが、これまでの前川さんの写真集とは違ったやさしさが感じられる。野生動物と向き合う作者の原動力に触れた気がした。