
ところが、ワシントン・ポストへのコメントはかなり腰が引けているばかりか、「弱気」に転じたともとれる。
実は、バイデン大統領がウクライナ情勢に専念できないほど、米国内事情は緊迫している。新型コロナウイルスの脅威が過ぎ去り、人々がレストランや旅に出かける解放感を味わい始めた矢先、高インフレが襲いかかった。5月のインフレ率は前年同月比で8.6%。1981年12月以来、最も高い上昇率だという。エコノミストからは9%に達するという予想もあり、市民の生活を直撃している。
コンサルティング会社のユーラシア・グループ社長で、国際政治学者のイアン・ブレマー氏は6月19日、こうツイートした。
「米国:左派政権、高インフレ 英国:右派政権、高インフレ ドイツ:中道派政権、高インフレ イタリア:誰もが政権、高インフレ ぶっちゃけたところ、政府のせいではない」
高インフレに市民怒り
ブレマー氏によると、ロシアがウクライナに侵攻した結果、エネルギーと食料の流通に大きな不均衡が起きた。また、欧米が新型コロナの感染拡大から普通の経済に戻ろうとしたとき、中国が各地でロックダウン(都市封鎖)など厳しい行動制限を実施し、物流を混乱に陥れた。こうしたことが世界的な高インフレの原因になったという。
つまり、ブレマー氏はバイデン政権を擁護したわけだが、このツイートは炎上した。それほど、米市民は高インフレに怒りを向けている。
ロイター通信によると、バイデン大統領の支持率は6月28日時点で38%にとどまり、不支持率57%を大きく下回った。政権発足以来、最低水準だ。重要課題は、高インフレを中心とした「経済」と答えた人が28%でトップ。「犯罪」「環境」「ヘルスケア」などが続き、ウクライナでの戦争を含む「戦争・紛争」は最下位の2%だった。
一方、ウクライナでは、親ロシア派勢力の支配地域がある東部のルハンスク州とドネツク州で、ロシア軍が攻勢をかけている。戦争が長引くことが予想され、それはバイデン政権にとって長期にわたる不利益をもたらすという認識が急速に高まっている。