ウクライナ東部のルハンスク州リシチャンスクはロシア軍に砲撃され、住居が破壊されている(写真:Los Angeles Times via Getty Images)
ウクライナ東部のルハンスク州リシチャンスクはロシア軍に砲撃され、住居が破壊されている(写真:Los Angeles Times via Getty Images)

 6月24日、米国内をさらなる大きな衝撃が襲った。連邦最高裁判所が、人工妊娠中絶をめぐり「中絶は合衆国憲法で認められた女性の権利」だとした49年前の判断を覆したのだ。同日午後5時には、ワシントンにある最高裁前のほか、全米の裁判所や公園が「私の体、私の選択!」と中絶の権利を求める男女のデモ参加者で埋め尽くされた。半世紀近く保障されていた女性の権利がもぎ取られたショックは大きかった。

影が薄かった大統領

 ところが、この直後もバイデン大統領の影は薄かった。ホワイトハウスで演説し、「裁判所と国にとって悲しい日だ。この極端な判断のせいで、女性が性暴力によって妊娠させられた子どもを産まざるをえない状況になってしまう」と最高裁を批判。しかし、「危機」のときに米市民が大統領に期待する感動的な演説とは程遠いものだった。バイデン大統領は翌25日、ドイツ南部エルマウで開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)に出席するため、混乱する米国を発った。

 G7サミットの共同声明は、ロシアの侵攻を受けるウクライナの将来の和平を決めるのは、ウクライナ自身だという内容だった。バイデン大統領のワシントン・ポストへのコメントに沿ったものだ。米政権が、こうした「落としどころ」を狙って世論形成しようとした様子が見え隠れする。

 しかし、ウクライナ問題を交渉による解決に持ち込んだとしても、米国内の混乱が続くのは間違いない。

 2024年の大統領選挙の行方を決める今年11月の中間選挙で、与党民主党は下院だけでなく、上院でも共和党に過半数を取られそうだ。

政権はレームダックに

 CNNのデータ記者、ハリー・エンテン氏によると、下院で共和党は236~241議席、民主党は194~199議席となり、共和党が80年以上ぶりの大差をつけて過半数の議席を獲得すると予測する。また、米政治専門サイトのポリティコによると、上院の獲得議席予想は改選35議席のうち、共和党が18、民主党が10で、激戦という予想は5議席という。

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