■困難な状況でも希望を見出して
新型コロナウイルスの感染拡大によって生活が変化する中、学生はどのような悩みを抱えているのか。精神保健支援室長の渡邉慶一郎准教授(東大相談支援研究開発センター)は「生活の変化で元々持つ悩みが大きくなっているのがうかがえます」と話す。しかし、新型コロナウイルス感染防止のため直接対面での相談を中止している現在、十分な体制で診療できていないという。「不十分な体制のまま平常時と同様に踏み込んだカウンセリングや薬の投与をすると、逆に治りを妨げる可能性があります。そのため今は、症状の完治を目指すのではなく、症状が現状よりも悪くならないよう持ちこたえよう、とアドバイスをしています」
渡邉准教授は、周囲に頼れる人が少ない学生たちが抱える孤立感にも注目。例えば、大学に行く機会がほとんどない新入生からは、新しい友人ができにくいことへの不安の声が寄せられている。一人暮らしの学生も、人とのつながりが激減して社会的な刺激が減ることで、生活に張りがなくなり生活リズムが乱れることが危惧されるという。そこで、人とつながるための手助けとして、学生相談所の「オンライン坐禅会」やピアサポートルームの「オンライン談話室」など、学年を超えた学生交流イベントを渡邉准教授は紹介する。加えて、ニュースやインターネット、SNSに流れる、新型コロナウイルスなどへの不安をあおるような情報に触れ過ぎないよう注意を促す。触れる情報が偏ると、考え方や気持ちの面でその影響を強く受け、閉塞感を強めるためだ。
生活リズムの乱れによる気分の落ち込みにも注意が必要だ。「深夜までパソコンの画面を見続けると、生活リズムが乱れて疲れが取れにくくなり、心の不調の一因となります」。また、一人暮らしの学生は、授業や食事、休憩など一日中同じ机や椅子で過ごす中で漫然とパソコンを使い続けてしまうことがあり、気持ちを切り替えづらい。この場合、各作業を時間で区切ってメリハリを付けるとともに、適度な運動を行うと良いという。「個人差はありますが、運動すると程よい疲労を感じて良く眠れる他、脳の血流が改善して倦怠感が解消されるなど、メンタル面にも良い影響があります」