長時間のパソコン作業と外出自粛生活が肩や腰に及ぼす影響も無視できない。運動器疼痛(筋・骨格系の痛み)が専門の松平浩特任教授(東大大学院医学系研究科)は、パソコン作業で姿勢が崩れることの危険性を指摘する。「作業で前傾姿勢になり、さらにストレスで自律神経が乱れると、背中のアウターマッスル(体の表面付近の筋肉)が緊張して疲労がたまります」。加えて、デスク上でキーボードを打つ時、パソコンと胴体の距離が遠いほど腰への負荷が増えることが、生体力学的に証明されている。
肩や腰の健康問題は若い世代も無関係ではない。「若い人でも腰痛になり得ます。腰に負荷が掛かる姿勢で作業を続けると、椎間板へのダメージが蓄積されるためです」。さらに運動不足が続くと、身体組織へのダメージを抑えるマイオカインというホルモン様の分泌が減り、関節炎などをもたらしうるという。
では肩や腰の健康を保つにはどうすれば良いのか。まず丹田(へその5センチメートル下辺り)を意識して肩の力を抜き、耳が肩の真上の位置に来るようにする。自然と姿勢が良くなり、インナーマッスル(体の深くに位置する筋肉)が働きアウターマッスルへの負荷が減るという。座り続ける時間を減らすのも重要だ。「1時間に1回は立ち、私が考案した『これだけ体操』を息抜きとして習慣化すると良いでしょう」と運動の重要性を強調する。
「多くの人にとって、悪い姿勢でいる方が楽に感じられるので、良い姿勢を保つのは困難です」と松平特任教授。インナーマッスルを常に働かせているのは難しい上、自分の姿勢は自分では観察しにくいためだ。しかし、悪い姿勢は長期的には体に害であることを肝に銘じ、健康を意識して生活する必要があるだろう。