生ビール1杯15ドル。コーラ1杯6ドル。ホットドッグとハンバーガー二つ、ビール1杯にコーラ2杯で、あっという間に合計金額は80ドルになった。1ドル135円で換算すると1万800円。日本なら、回っていない普通のすし屋でランチができる。
ちなみに、球場が特別に高い、というわけでもない。ロスのダイナーの朝食もチップ込みで75ドル(1万125円)。夫はヨーグルトとグラノーラ、息子はフレンチトースト、私はスクランブルエッグを頼んだだけだ。
別のカフェで飲んだコーラ・フロートは1杯10ドル(1350円)。三つで4050円。頭がくらくらする。
もちろん、ニューヨークも物価はめちゃくちゃ高い。コロンビア大学前の、普通の食堂のランチは、ベーグルサンドとオレンジジュースで15ドル(2025円)。学生は安くあげるために、スーパーや屋台で10ドル程度の食べ物を買っている。
そして、大半の学生が水筒を持参している。飲み物代もバカにならないからだ。
なぜ、観光客の来ない店までこんなに高いのかと調べてみたら、実は物価と連動してアルバイト代も高騰していた。ファストフード店の時給はマンハッタンでは15~17ドル(2025~2295円)。もし時給が17ドルなら、ランチ15ドルは決して高くないのかもしれない。ちなみに最近、私が最も驚いたニュースは、アマゾンのニューヨークの倉庫の労働者が時給30ドル(4050円)を要求するデモをしていたことだ。時給30ドルって、私がテレビ局の正社員だった時の給料より高いのでは……。
アメリカのインフレもひどいが、日本人の給料は30年上がらぬまま、先進国の基準から置いてきぼりになりつつあるようだ。球場でハンバーガーができるのを待つ数分間に、思わず日本経済の行く末を考えて悲しくなってしまった。
買い物を済ませて座席に戻ると、フェンス越しに、ベンチにいる大谷選手の背中がはっきりと見えた。ひときわ輝くOHTANIの文字。
まぶしいその背中を見ながら、母は思った。息子よ、日本にいてたくさん稼げる時代は、多分終わってしまった。海外でも稼げる人間になれ。それが、君たち世代のミッションだ。
※AERAオンライン限定記事