もしや、セックスレスの背景には、「日本人女性の多くが、産後に膣トレをしていないこと」が大きく影を落としているのではないだろうか。
多香子さんも、産後にきちんと膣トレをしておけば、尿漏れに苦しむことも、性交痛を我慢することもなかっただろうし、前夫との関係も破綻しなかった可能性がある。もしくは前夫がもっと愛情深く接し、多香子さんにあまりストレスをかけないようにしていたら、結果は違っていたような気がする。
そういう意味では、夫の皆さんには、もしも産後、妻の性欲が落ちたと感じたり、尿漏れ、性交痛に悩んでいる気配を察知したら、膣トレについて、夫婦で相談してみることを提案したい。セックスレスの原因は、愛情や関心の薄れではないところに潜んでいるかもしれないからだ。
さて、多香子さんは、尿漏れが治りつつあることに感動し、「女としての自信を取り戻させてくれてありがとう」と若い彼に、心の底から感謝している。愛情も感じている。
ただし、彼の方は結婚を希望しているが、多香子さんにその気はない。というか、してはいけないと思っている。16歳も年上で、彼の赤ちゃんを産んであげることができない自分が、結婚なんてしてはいけないと考えているからだ。
「あなたには、父親になる幸せを体験してほしいの。子どもって、かけがえのない存在だから。だから早く、私以外の、若い女性と恋をして、私のもとから去っていってちょうだい。私は大丈夫だから。あなたには幸せになってほしいから」
会うたびに言ってしまうのは、本当はずっと一緒にいたいという気持ちの裏返しだ。尿漏れは治っても、多香子さんの憂鬱は続く。
(医療ジャーナリスト 木原洋美)