ラーメン激戦区の渋谷で1位の座を譲らない「らーめん はやし」のラーメンは格別だ(筆者撮影)
ラーメン激戦区の渋谷で1位の座を譲らない「らーめん はやし」のラーメンは格別だ(筆者撮影)
この記事の写真をすべて見る

 日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、名店店主が愛する一杯を紹介する本連載。激戦区・渋谷で長年No.1の座を譲らない「らーめん はやし」の店主が愛する一杯は、数々の名店を渡り歩いた店主が、その「はやし」の味にリスペクトを込めて作った一杯だった。

【写真】飽きない旨さ 中野の名店がつくるラーメンはこれだ!

■動物系+魚介系ラーメン ブームが去ったワケ

 老舗や気鋭の新店、大手チェーンがひしめくラーメン激戦区の渋谷で、創業17年目ながら毎年グルメサイト「食べログ」で1位の座を譲らない名店がある。「らーめん はやし」である。

 基本メニューは「らーめん」「味玉らーめん」「焼豚らーめん」と3つのみ。日曜と祝祭日が定休日で、営業時間は午前11時半から午後3時半まで。スープが無くなり次第終了だ。このハードルの高さにもかかわらず、本当にファンの多いお店である。

らーめん はやし/〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-14-9/11:30~15:30、日・祝定休、スープ終了まで/筆者撮影
らーめん はやし/〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-14-9/11:30~15:30、日・祝定休、スープ終了まで/筆者撮影

 店主の林真剛さん(58)はラーメン店で修行したわけでも、ラーメンフリークだったわけでもない。数々の飲食業を経験した後、狭い土地でもできる業態だとラーメンに目を付けた。

 動物系と魚介系のスープを合わせ、化学調味料不使用(無化調)ながら爆発的な旨味を生み出す。まさに1+1が3にも4にも感じられる美味しさで、「はやし」だからこそできるバランスの妙である。

「はやし」がオープンした2003年頃は、首都圏を中心に動物系と魚介系を合わせたWスープの人気に火が点いていた。1996年に開店した「中華そば 青葉」(中野)がきっかけとなり、人気に。「はやし」も流行に乗ったように思えるが、そうではない。「選択肢はそれしかなかった」と林さんは振り返る。

「若者の多い渋谷で、無化調でしっかり旨味を感じられるものを考えたら、動物系+魚介系の一択でした」

 濃厚な豚骨と繊細な魚介系の良さを合わせ、濃厚ながら旨味がしっかり感じられる「はやし」のラーメンは存在感を放っていく。

 Wスープのブームはひと段落し、今では本当に美味しい店以外は淘汰されつつある。この動きについて林さんはこう語る。

著者プロフィールを見る
井手隊長

井手隊長

井手隊長(いでたいちょう)/全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。Yahoo!ニュース、東洋経済オンライン、AERA dot.など年間100本以上の記事を執筆。その他、テレビ番組出演・監修、イベントMCなどで活躍中。ミュージシャンとしてはサザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」などで活動中。本の要約サービス フライヤー 執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。著書に『できる人だけが知っている 「ここだけの話」を聞く技術』

井手隊長の記事一覧はこちら
次のページ
Wスープが淘汰される理由