朝日新聞出版より1月7日発売予定

「あなたはこの2週間、なにをしていましたか?」「まぁ普通に会社に行って、休日は……あ! 久しぶりに映画を観に行きました」「感想は?」「普通に面白かったですよ」「どんなところが?」「まぁ、とりあえず好きな俳優さんが出ていたんで観に行ったんですけど。なんていうか、存在感がありますからね、あの人やっぱり」「あの、すいません」「はい」「質問の答えになってないんですけど」「え?……あぁ! そうでした。まぁ、全体的に面白かったと思いますよ」「そうですか」「えぇ」「では次の質問なんですけど」「はいはい」「この2週間で何か考えたことはありますか?」「んーそりゃいろいろありますよ」「例えば?」「普通に仕事のことだっていろいろ考えますし、あと社会的な問題も、消費税増税とか?も考えちゃいますよね」「ほかには?」「やっぱり環境問題ですよね」「ほぉ」「異常気象じゃないですか、もう地球規模で」「ですよね、どうしたらいいんでしょう?」「ちゃんと考えなきゃダメですよね」「あなた自身はどんなことを考えてます?」「リサイクルですよね。ペットボトルとかちゃんと分別して、指定された日に出すとかはやってますよ」「大事なことですね」「それとあと、台風とかもすごいんで、この前ネットで調べて丈夫な傘を買いました」「あぁ傘を」「骨組みがしっかりしていて、日本製なんですよ、やっぱメイド・イン・ジャ」「あの」「はい」「また質問の答えになってないんですけど」「え? どこが?」「一度整理しましょうか」「はい……」「あなたはなぜ傘を買ったんでしたっけ?」「台風とかすごいから」「なぜ台風がすごくなったんでしょう?」「異常気象だから」「なぜ起きているんでしょう?」「あぁそれは」「それは地球規模の環境破壊が大きな要因で特にCO2の排出による気温の上昇が問題視されている」「あぁ、はいはいそうです」「ではこの問題を改善するためにはどうしたらいいんでしょう?」「ちゃんと考えなきゃダメですよね」「そこです! あなたはさっきも同じことを言いました!」「あぁ、はい」「そしてあなたは言いました、ペットボトルのリサイクルを実行していると」「いいことですよね?」「いいことですよ。でもそれはあなたの行動であって、私が聞きたいのは、なぜ! あなたが! リサイクルをしているのか!ってことです」「そりゃ分別がルールだからでしょ」「それじゃダメでしょう!」「は? ルールを守るのがダメなんですか?」「そうじゃない! あなたの思考がダメだって言ってるんだ! なぜリサイクルするのか! 少しでも資源を有効活用するため! そのためにやってんでしょう!」「そんなことみんなわかってますよ!」「わかってない! あなたはルールだからやっているだけだ! だから最終的に『丈夫な傘を買いました』なんていうふざけた回答になるんだ! 傘を買うことで地球を守れますか! 傘が守ってんのはあんたが着てるその高価なスーツだろ!」「あのすいません、眠くなってきたんでもういいですか」「はぁ?」「明日も仕事なんで」「わかりました。じゃあ今夜はこのぐらいにしましょう」「え? 明日もやるんですか?」「やりますよ。明日はあなたが仕事で考えていることを聞きましょう」「ごめんなさい、実際そんなに考えてないんで」「じゃあ映画の話にしましょう。そのナントカっていう俳優のことじゃなくて、映画を観て考えたこととか、あるでしょう」「ないです」「まったくない?」「ないです」「それじゃ困るんだよなぁ」「どうして?」「だって、あなたが考えてくれないと原稿が書けないから……」

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