撮影には日の出前に現場に到着するのが望ましい。ただしヘッドライトやエンジン音などで周辺住民の迷惑にならないようにすること。三脚は必須で、日の出前の目覚めたばかりのハクチョウの姿をスローシャッターでねらうところから撮影を始める。気温も重要で、零度前後の日であれば水面から毛嵐が上がったり、ハクチョウの呼気が朝日に輝くシーンがねらえる。
【愛知県設楽町】オシドリ
愛知県設楽町のおしどりの里は、鳥取県日野町と並ぶ日本の2大オシドリの撮影名所。シーズンは11月中旬から3月上旬まで。豊川上流部の寒狭川沿いに設けられた観察小屋から撮影する。オシドリは非常に警戒心が強く、人の姿が見えるとかなり距離をおいても飛び立ってしまう。
しかし、ここでは観察小屋を設置し、50年の長きにわたるオシドリ保護のおかげで、シーズン中には400羽以上を間近で見ることができる。神経質な鳥なのでストロボは使用禁止。撮影用の小窓からレンズの先端が出ないようにするなど、現地のルールにしっかりと従うこと。
風景的なカットなら200ミリクラスでも撮影可能だが、500ミリから800ミリ程度の超望遠レンズがあるとオールマイティーに撮影が楽しめる。超望遠のレンズでなくてもAPS-C機やクロップ機能などを使えば対応できる。
谷底に位置し、光の差し込まない時間帯が多いので、撮影感度をこまめに設定し直して手ブレや被写体ブレに注意すること。ISO感度オートを利用するのもいいだろう。
運次第だが、まれにオシドリをねらって猛禽類が現れることもある。私が撮影したときはクマタカが姿を現した。小鳥もたくさんいて一日中撮影が楽しめる場所だ。
写真・文=福田幸広
※『アサヒカメラ』2019年12月号より抜粋。本誌では日本全国7カ所の撮影スポットや福田氏の撮影術を紹介している。