カップ麺買いだめも

 ガソリン以外の物価高騰もすさまじい。サンタモニカ市の警官たちのランチの場所として人気の庶民的な飲食店「Zガーデン」では、グリークサラダが14ドル、水のボトルが2ドル95セントだ。合計すると日本円で約2300円だ。マイカーで会社に通勤し、ランチを外で食べれば、毎日3千円以上が軽く飛んでいく計算だ。

 100円ショップに近い形態の「99セントストア」に行ってみると、朝から店の駐車場は満車だ。カップラーメンを20個以上買いだめする客や、ひとつ55セントのピーマンの鮮度を真剣に確かめている客など、誰もが1セントでも安く食料品代を抑えようと必死だ。

「もう車での通勤は諦めた。自転車とバスで何とかしのいでいる」と語るのは同州オレンジ郡に住む50代後半の金融機関勤務の男性だ。

 投資家など富裕層の顧客へのイメージを重視する彼の勤め先では、かつては高級仕立てのスーツとネクタイ着用が義務づけられていた。だが、コロナ以降は服装のカジュアル化が急激に進んだ。そうしなければ、自宅勤務に慣れてしまった社員をオフィスに呼び戻せないのだ。

 この男性は、ポロシャツとチノパン姿で近くのバス停まで自転車をこいで行き、そこから30分間路線バスでオフィスまで通勤するスタイルに変えた。

「たまたま自分の職場までバス路線があって超ラッキーだ。ただでさえ治安が悪化している中、バス通勤なんて危険すぎると周囲に言われるけど、子どもを大学に行かせたいし、ガソリン代でなけなしの貯金を燃やすわけにはいかないんだ」

(ジャーナリスト・長野美穂)

AERA 2022年7月4日号

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