ビバリーヒルズのガソリンスタンドの価格。1ガロン当たり約7ドル
ビバリーヒルズのガソリンスタンドの価格。1ガロン当たり約7ドル
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 ガソリンをはじめ、食料品などあらゆるモノが高騰している米国。物価高に苦しむ市民の現状を、現地から報告する。AERA2022年7月4日号の記事を紹介する。

【グラフ】昨年からの米国の物価の驚異的な伸び率がこちら

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 ガソリン代の高騰で、米市民が悲鳴を上げている。全米で最もガソリン価格が高いカリフォルニア州のロサンゼルス(LA)近郊では、1ガロン(約3.8リットル)当たり6ドル台後半から7ドルを突破した。全米平均より2ドル以上も高い。

「こんなことなら、古いプリウスを売却しなければよかった。コロナ禍の間に大型SUVに買い替えたばかり。タンクを満タンにすると120ドル以上する。あまりにも高すぎる」と語るのは同州北部に住む60代のランディ・ゴスさんだ。

 折しも米国株の急激な下落で、引退後の資金として頼りにしていたインデックス株投資で一気に約4万ドルを失ったゴスさん。まさにダブルパンチだ。

 バスや地下鉄など公共交通機関が充実したニューヨークやヨーロッパの都市と違い、ひとり1台車を所有しなければ、生活が成りたたない車社会のカリフォルニアでは、運転しないという選択肢は、ほぼない。

「州から緊急ガソリン代補助があると聞いていたけど、いまだに実現していないじゃないか」とゴスさんは言う。

富裕層との“階級格差”

 州知事はマイカー1台につき400ドルのガソリン代補助のプリペイドカードを住民に支給すると発表したが、カードが配布されるのは秋の予定で、多くの住民はとてもそんなに長く待てないと不満を爆発させる。

 そんな中、ガソリン代高騰の影響を一切受けないのが電気自動車(EV)の所有者たちだ。

「以前はミニクーパーを所有していたけど、ガソリン代がかかりすぎるからテスラとGMボルトに買い替えたよ」と語るLA在住の男性は、自宅の庭でその2台を充電している。ガソリン代はゼロだ。

 EVを所有するには充電可能な車庫か庭、つまり一軒家が必要なのだが、住宅価格が高騰したLAで家を購入するには今や最低1億円から2億円はかかる。

 富裕層は、EVでガソリン代高騰の不安から解放され、アパート住まいの庶民は、高いガソリン代を払い続けるという“階級格差”が存在するのだ。

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