<三平弁護士の見解>

 暴言だけであっても、それが公共の場所や乗り物(講堂や劇場、飲食店、電車や船、飛行機など)の中で、お客さんに対して向けられた暴言ならば「軽犯罪法」違反となる可能性があります。それ以外の場所でも、先述したように「どかないと殴るぞ」という言い方をすれば「強要罪」に該当します。トラブルに発展して、殴ってしまったらこれは一発アウト。「暴行罪」が適用されます。

<こんな罪になる?>

◆軽犯罪法違反(暴言)
拘留または科料

◆暴行罪
2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料

■撮影マナー問題 私たちにできること

 これ以外にもアンケートでは多くの回答を頂いた。紙幅の関係ですべては掲載できないが、何をマナー違反と感じるかは立場によっても変わってくると感じた。たとえば、「長時間場所取りをしている」ことをマナー違反だと思う人がいる一方で、「後から来ていきなり目の前に入ってきた」ことを不快に感じる人もいる。地道に何時間もシャッターチャンスを待っていたのに何の断りもなく、後ろから前に入られたらいい気分はしないだろう。つまり、状況や立場によって「正しさ」は異なるのだ。

<三平弁護士の見解>

 撮影者には、それぞれ撮ることへの『正義』がある。自然の素晴らしい色彩を作品に残したいなど純粋な気持ちがあるはずです。その気持ちが強いがゆえに、場所取りをどんどん拡大したり、立ち入り禁止区域に入ったりしてしまう。ファインダーをのぞいているうちに『正義』が暴走してしまい、マナー違反から違法行為への“一線”を越えてしまう。そういうケースも多いのではないでしょうか。自分の『正義』が他人の迷惑になっていないかという視点を持つことが大切だと思います。

 もちろん、列挙したような行為をしている人はごく一部だろう。だが、度を過ぎたマナー違反は違法行為になりかねないという危機意識は持っていたい。

 こうした事例からいま一度、わが身を振り返り、周囲に配慮したマナーを心がける気持ちがあれば、違法となるような撮影行為には決して至らないはずである。

取材・文=作田裕史

※『アサヒカメラ』2019年10月号より抜粋

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