「風景写真は、『最初の一歩』がいちばん難しい。最初の一歩というのは着眼点」。風景写真の作品で問われるのは、いかにほかの人とは違うものを見つけられるか、それは「何を面白がれるか」といっても過言ではない――。『アサヒカメラ』2019年10月号では、62ページにわたって「紅葉と秋の風景の撮影術」を大特集しています。【レンズレビュー】写真家8名が徹底解説「風景撮るならこの1本!」に続き、「風景撮影とマナー問題」を抜粋して紹介します。
【写真】白馬村の現場。踏み荒らされた畑には足跡がくっきりついている
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カメラマンがひしめく人気の風景スポットで勃発するのが「撮影マナー問題」だ。本誌がアンケートを実施すると400人以上の「怒りの声」が集まった。かなり悪質な事例も少なくない。弁護士の全面協力を得て、マナー違反と法律違反の「境界線」を探った。
今年5月、あるツイートが世間の注目を集めた。
<このマナーの悪いカメラを持った人達はどうにかなりませんか(怒) 耕したばかりの畑を踏みつけ、進入禁止の高台に登り 集落の住人が生活のために大切にしている畑に勝手に入り込み そんな事しないと撮れないならカメラやめてくれ>
長野県白馬村にある桜の撮影スポットで、畑を踏み荒らしながら撮影するカメラマンたちに苦情を訴える投稿だった。ずかずかと畑を踏みつけながら、三脚を立ててカメラを構えるカメラマンの姿には非難が殺到。またたく間に拡散し、リツイートは約4万3千件に上った。テレビ局も現地取材に入り、この問題は報道番組でも取り上げられた。ツイートをした長野県大町市に住む黒田康行さん(47)は当時をこう振り返る。
「この場所は観光地ではなく、普通の農村集落に一本の桜が咲いている居住地です。私も毎年撮影をしていますが、数年前からSNSの影響もあってか、目に余るマナー違反者を見かけるようになりました。昨年からは地元の人がロープを張ったり、役場が看板を立てたりしていますが、効果なし。今年は延べ100人近い人が、耕された畑に足跡をつけながらズカズカと入っていくのを見たり、夜には三脚で道路がふさがって住民が通れないと聞いたりしたので、さすがに声を上げるべきだと思ってツイートをしました」