世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、取材先でメモした記録から気になったトピックを写真を交えて紹介する。
■「ありえない」組み合わせが生み出す味
「ブードゥー・ドーナツ(Voodoo Doughnut)」はオレゴン州のポートランドの名物で観光名所となっているドーナツ屋だ。看板から持ち帰り用の箱まで、奇抜なデザインが評判になっている。
そこで売っていた色とりどりのドーナツのなかで、もっとも目を引いたのはキャラメルソースにベーコンをトッピングしてあるドーナツだった。アメリカ人がチョコとベーコンを食べるとか、ベーコンをトッピングしたドーナツを食べるなどという情報だけは、以前から知識として持っていた。だが、その組み合わせを試す機会は、なかなか訪れなかった。
ジャーナリストとして、情報をもらっても再現不可能なのは味(味覚)とにおい(嗅覚)だと思っている。だからこそ目の前にあるというだけで、とにかく試してみたいとなったのだ。
いざ実食すると、予想外だった。キャラメルの甘みにベーコンの塩気が程よいのである。悔しいかな、おいしかった。
「甘い+しょっぱい」を合理的にやるとベーコントッピングなのだ。そんなアメリカ人らしい発想を突きつけられた思いがしつつ、すでに合理的な味を受け入れてしまっている私がいたのである。(文/丸山ゴンザレス)