「ぼーっとしていたり、真顔のときでも、長い目でその写真を見ると大事なポートレートになります。ぱっと見で感動的な瞬間はたぶん僕は撮らないです。もっとふつうの、なんでもない状況を撮りたいですね」
まずは真顔から。ハードルは低いが奥が深いスタートだ。
「ベストの表情があったとして、撮れたらそれはそれでいいのですが、その後の気の抜けた感じのほうがナチュラルだし、そこも取りこぼさないのが大事だと思います。なので、僕は撮ったら終わり!ということを言いません」
きまりの後がねらい目。このセオリーは、子どもに限らず肖像写真全般にいえる。
「子どもがやりそうなことをできるだけすくい上げています。みかんのカゴをかぶったり、影で遊んだり。それはほとんどの子どもがやるし、誰もがそんな行動を知っていると思いますが、見過ごしているだけなんですよね」
親の目からすると、ごくありふれた子どもの行動。それをしっかり拾うこと。見過ごしがちな日常のささいなひとコマにチャンスはたくさんちらばっている。
〈子どもをどう撮るか? 中級編〉
「第三者を入れない」
「リアルから少し離れてみる」
「予測行動の後をつかむ」
■子どもだけの世界に
「構図を決めてそこで何かが起こるのを待つ場合が多いです。何が起きるかは、子ども次第。絵として安定しているけれど、子どもがしていることはそうではない。そこがいいバランスになっているのだと思います」
濱田作品の魅力の一つは、丁寧に引き算をほどこした構図にある。そこで子どもがごく自然な存在感を放つ。注目したいのは第三者がほとんど写っていないことだ。
「不特定多数の人がいそうなところでも画面の中を整理しています。商業施設の中だとかビーチでも、もっと人がいそうなところも、あえて誰もいないような方向で撮っていますね」
作画的な考え方で現実をちょっと飛び越える。その結果、見る側は子どもだけの世界を感じることになる。日常を特別な何かに変える意図がポイントだ。リアルから少し離れることが大切だ。
■予測行動の後をつかむ
「走っていたり、早く動いているものは、基本的には絵だけ決めておいて置きピンしています。家の中では置きピンはしないですね。空間としてそんなに広くないから、自分が動けばいいわけですし」
上の写真では、子どもが画面の左側から右に移動している段階で絵作りをしている。
「自分のなかで移動が予測できていて、構えたときには置きピンしている。ここで何かが起こってほしいと。グラフィカルに空間をとらえ、面で見ています。それで、左右にいるどちらかを撮るパターンが多いですね」