総務省が7月に発表した人口動態調査によると、日本の総人口は前年に比べて43万人も減った。外国人は17万人増えて、約267万人となった。日本の多文化社会化はますます進むだろう。
イギリスがEUを離脱するきっかけは移民問題だった。ブレイディみかこの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を、多様化と差別と子どもという観点で読むといろいろ勉強になる。著者はいまもっとも注目されるライターで、イギリスの現在を労働者の街から伝える。
著者の配偶者はアイルランド人のトラックドライバー。二人の間の息子(つまりイエローでホワイト)が中学校に進学するところから、このエッセーははじまる。
息子が選んだのは、白人労働者階級の子どもが多く通う中学校で、ちょっと前までは荒れた底辺校だった。生徒たちに音楽やダンスなど好きなことをさせる方針に変えたら、みんな生き生きとして、成績も上昇中。なにしろ音楽室の奥にはレコーディング・スタジオまである。
学校という空間は、いろんな矛盾の吹きだまりでもある。ハンガリー移民の少年は親ゆずりの人種的偏見の持ち主だし、食費や制服代にも事欠く子どもがいる。社会が多様化すると、問題はどんどん複雑になっていく。
だが、希望は子どもたち自身にある。年長の生徒が学内のクリスマスコンサートで、自分たちの貧困ぶりをラップにして歌うシーンは圧巻だ。「万国の万引きたちよ、団結せよ」と歌う生徒を、校長はじめ教員たちは誇らしげな表情で見ている。こういう学校、日本にもほしい。
※週刊朝日 2019年8月2日号