7月14日は、日本で夏の季語にもなっている「パリ祭」です。1789年のこの日に起こったバスチーユ監獄襲撃事件は、フランス革命の発端となりました。共和国成立を記念する日として、フランスでは「Fête nationale française(フランス国民祭)」と呼ばれ、国を挙げて式典やパレードが行われています。
日本でも関連イベントが行われており、フランスの文化に親しむ機会になっていますね。今回は、過去、現在、未来のパリを舞台にした3本の映画をご紹介します。パリを巡る時間旅行に出てみましょう!

モノクロで綴られる、パリの下町の恋模様。ルネ・クレール監督『巴里祭』

チャールズ・チャップリンや小津安二郎監督にも影響を与えたフランスの巨匠ルネ・クレール(1898年11月11日 ~1981年3月15日) は、人情味あふれるあたたかい視点で数々の名作を生み出しました。
『巴里祭』(1933年)の原題は、『Quatorze Juillet(7月14日)』。フランス革命記念の「巴里祭」前日、にわか雨がきっかけではじまった恋とその後のすれ違いが、笑いと哀愁を織り交ぜて描かれています。
戦前に公開され、日本でも大ヒットを記録。そのため、公開時のタイトル『巴里祭』は、日本でのみ「Fête nationale française」を指す呼び名となったのです。

現在、『巨匠ルネ・クレール監督 生誕120周年記念』として、4Kデジタル・リマスター版がYEBISU GARDEN CINEMA(東京)ほか全国で順次公開中。この機会にぜひ映画館で鑑賞したいですね。

古き良き1920年代のパリにタイムスリップ!ウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』

アメリカを代表する知性派監督ウディ・アレン(1935年12月1日~ )が描く『ミッドナイト・イン・パリ』 (2011年)は、1920年代と現在のパリが舞台。
過去と現在を行き来する主人公は、小説家志望のアメリカ人。ある夜、若きヘミングウェイが住んでいた部屋近くの教会から、過去のパリにタイムスリップします。そこで彼は、ガートルード・スタインやフィッツジェラルド、ダリやピカソ、ヘミングウェイといった芸術家たちと交流し、夢のような時間を過ごします。
やがて現在に戻った主人公は、重大な決断をすることになります。夢の世界だったパリが現実となった時、彼はどのような日々を過ごし何を感じるのでしょうか。

近未来、漆黒のパリ。鬼才レオス・カラックスが描く疾走する青春映画『汚れた血』

ゴダールの再来といわれ、現在もカルト的な人気を誇るレオス・カラックス(1960年11月22日~)。長編2作目にあたる『汚れた血』(1986年)は、彼が26歳の時の作品です。
舞台はハレー彗星が再び近付く近未来のパリ。人々は、治療法がみつからない“STBO”という奇病の蔓延に怯えながら暮らしています。
ドニ・ラヴァン演じる主人公アレックスは、カラックス監督の分身といわれる存在。天涯孤独で閉塞感をかかえる少年アレックスは、ある日ひとりの少女に恋をします。そこから彼の人生は大きく変化し、衝撃のラストへ向けて疾走していきます。
主人公はアレックスなのですが、謎めいた美少女を演じるジュリエット・ビノシュと、アレックスの美しいガールフレンド役のジュリー・デルピーが秀逸。ふたりのみずみずしい透明感と凛々しさが、『汚れた血』を奇跡の青春映画にしたのかもしれません。

カラックス監督、ドニ・ラヴァンとジュリエット・ビノシュ主演の『ポンヌフの恋人』、ジュリー・デルピーが主演、脚本を担当した『ビフォア・サンセット』もパリが舞台。
ロマンチックでミステリアスで、時に愁いをおびたパリ。数多の映画の舞台となったこの街の魅力を、ぜひ堪能してみてはいかがでしょうか。