「地面師」とは、偽造パスポートなどを使ってニセの地主を仕立て、土地を転売する詐欺師のこと。現在は、戦後の混乱期や80年代のバブル期と並ぶ暗躍期にあるという。取りざたされる事件で何度も名前が出てくる「スター地面師」にも対面取材するなど緊張感のあるルポルタージュだ。

 登場する地面師は14人。被害額55億円といわれる積水ハウス事件でも名前が挙がる男は、別の事件で逮捕された際、「年収はだいたい2000万円でしょうか」と検事に語る。

 地面師とタッグを組む元弁護士を追い、狙われる物件には共通項があると指摘するなど、取材の積み重ねから時代が見えてくる。捜査に腰が引ける警察に苛立ち、「署の玄関先で焼身自殺をしてやろうと思った」と被害者が怒りを露にする場面では、生々しさにぞわぞわする。(朝山 実)

週刊朝日  2019年2月1日号