――きっかけになったことが何かありましたか?
積み重ねだと思います。知識が付けば付くほど、いろんなものに違和感が生まれるんですよ。言ってみれば地球の中のある国、ある地域でしかないわけで、そこに優れた作品を作っている人と、優れた出演者たちが集まっているからいい作品ができる。日本でそれできないのはエンターテインメントにかけるエネルギーが違うのかなと思います。
僕はNYとかLAにいるときに何度か撮影に立ち会っていますけど、道を閉鎖して、街を閉鎖して国を上げて撮影するわけですよ。車をぶっ壊して、ビルを爆破して。日本人はエンターテインメントとか、フィクションを作るためにノンフィクションを壊さないんですよね。絶対にこれはあるべきだというルールがありすぎて、つまらないなと思うこともあります。
それに時代がどんどん変わってきていて動画配信サービスのNetflixとかHulu、amazonプライムなどでオリジナル作品を作るようになって、ハリウッドに行かなきゃ海外作品に出られないという時代じゃないんですよね。実際に僕にもいくつか話があったりするぐらい身近になってきて、どこの国がいいというよりも、いい作品がバズって、残っていくという時代になっています。日本でも「カメラを止めるな」の例もありますが、ずば抜けて良いものは100%口コミで広がる。我々が日本で低予算で作品を作っても海外に出せる可能性はあるわけだし、わざわざ海外に飛び出すことが近道かというと、人によるんですよ。
こうやって具体的に、すごくシビアに、メリット・デメリットが見えちゃうので、小学生のころに漠然と抱いていた夢のようには思えなくなったということです。
――最近は演者から裏方に回る方も多いですね。
そうですね。起業する人もいて、とてもいい傾向だと思います。海外では多いんですよ。レオナルド・デカプリオにしてもアンジェリーナ・ジョリーにしても、自分たちで企画して監督して作品を出して、社会に対してもこれをやろう、これを無くそうと自分たちの思想をどんどん伝えている。エネルギーに満ちているし、自分を偽らないのが素晴らしいなと思う。