毎回、感じますね。もっとうまくなりたいと思います。

 僕は13歳で以前の事務所に入ってボイストレーニングを始めて、「あなたは歌手としては難しい」と突きつけられました。その頃の音源があるんですけど、本当に超素直な、何の魅力もない真っ直ぐな声の子なんですよね。それに比べるとずいぶん伸びたとは自分でも思いますよ。感情表現や音のキー、テクニカルな部分でも、僕は努力でここまで来たんです。でも、例えば、今回のアルバムで「闇が広がる」を一緒に歌っているラミン・カリムルーは、誰からも音楽のレッスンを受けないまま、唐突にオーディションに行って受かって、そこからスター街道まっしぐらの人なんですよ。そういう人が世の中にはいるんです。だからそういう人たちがもっと出てくればいいし、その人たちがもっと努力をしてもっと高みに行ければいいと思っています。

 少なくとも僕の成長も十分な成果なんですけど、10年以上やってきて自分の伸びしろは自分でよくわかっているので、そういう意味で限界を感じています。決して日本の中で僕のレベルが低いと言うつもりは無いけど、僕なんかよりもっと上手い人は現れるべきだし、現れないシステムは変えなきゃいけない。ミュージカルがやりたいと思っている人も、上手い人ももっともっと世の中に溢れていると思う。そういう人たちを発掘して育てたいという気持ちが強いですね。

(撮影/写真部・片山菜緒子)
(撮影/写真部・片山菜緒子)

――例えば、ミュージカルでブロードウェイに行きたいとか、映画でハリウッドに挑戦したいという演者としての夢は?

 無いですね。もちろん人生の経験として一回ぐらいはやってみたいなというふわっとした思いはありますけど……。本気で挑戦したら、ブロードウェイで役をもらうことができるかもしれないし、それをやって帰ってきたら日本での評価は上がると思うんですけど、ステイタスとか箔がつくとか、そういった評価は今の僕にはいらないと思っています。

 それよりも日本国内から変えて行かなきゃいけないし、いつまでも「アメリカすごい、アメリカに行きたいって」言ってるんじゃなくて、「日本のミュージカルっていいよね」って世界から注目されるぐらい頑張らなきゃいけないんですよ。僕自身も留学したいって思っていた時期もあるし、実際に5、6年前に1カ月間だけですけどLAに行っていたこともあるんですが、最近は、みんな外に出ることしか考えていなからもったいないと思いますね。小さいころから「いつかハリウッドに出たい」と言っていた気持ちはだんだん薄れていってる。それは諦めとかではなく、単純に心の変化ですね。

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ハリウッドに行かなきゃ出られない時代じゃない