週刊朝日 2022年12月30日号より

お金に関しては大丈夫だから」と言う英樹さんに対して、加代さんは「夫が言うほど大丈夫とは思えず、老後の家計をシミュレーションした」と言う。

「まず定年後、1年間の生活費を計算しました。支出は家計簿をつけていたので、夫婦で毎月約22万円で生活ができる道筋がつけられました。次に私が受け取る年金を計算して、夫に先立たれた後、私がひとりになったときの生活費を試算しました」(加代さん)

 夫婦で生活していたときの半分にはならず、月約17万円、年間200万円は確保したいと考えた。

 妻がひとりになっても生活が成り立つのか、というように「お金にまつわる不安」を書き出す。

 その「不安」を夫婦で共有しながら、具体的に金額を出すことで不安を解消していくプロセスがとても大切という。

 お金の不安を話し合うと、年金の繰り下げなどの受け取り方や、65歳以降の働き方も決まってくる。このように、定年前後のお金や仕事、生活に関して、くれぐれも夫が一方的に決めないようにしたい。

「私(70歳)の世代は、男は一家の大黒柱として稼がなければならないという思い込み、『大黒柱バイアス』にとらわれている人が多く、家庭やご近所デビューなど、生活圏が会社から自宅に移るとき、さまざまな弊害を起こします。この『大黒柱バイアス』を早く捨てて、家庭内では妻を上司だと思って従うことです(笑)」(英樹さん)

 例えば、再雇用、再就職で働く際も、ついエラそうな態度で人と接してしまう人もいるだろうが、マウントを取ろうとすると相手に嫌われる。

「現役時代は大した仕事はしてこなかったと自分に言い聞かせるようにしてきました。好きなこと、やりたいことにチャレンジしてそれを仕事にすればいいと思います。無理に何十万円も稼ごうと気張らずに月3万~5万円ぐらいでいいと思えば、いくらでも仕事は見つかります」(同)

 また最近は「プロボノ」といって、自分のスキルを登録して、休日や夜の時間を使って、地方企業やボランティア団体にノウハウを提供する「マッチングサービス」もある。

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