また、ヤスヒコさんのように60歳以降、働き続ける人は「雇用保険」から受け取れる手当があるので、忘れないようにしたい。

 60歳以降、再就職した人の給料が60歳時点の75%未満に下がった場合、「高年齢雇用継続基本給付」がもらえるのだが、「60歳時点の給与の上限が47万8500円」「月額の賃金が支給限度額を超えると支給されない」というルールがあり、「75%未満」という条件をクリアしても給付の対象にならないケースがある。

 いずれにしても自分で計算しないで、ハローワークで相談してみよう。

 これらの退職一時金、企業年金の受け取る時期やもらい方の手続きを含めて、たいていの会社では50代の社員を対象に「リタイアメントセミナー」が開催され、自分で情報収集をしなくても会社が教えてくれるのでひと安心。

■妻と夫では違う知りたい情報

 都内に住むタロウさん(仮名・58歳)は、「大事な話なんだからしっかり聞いてきてね」と、妻に送り出されて会社主催のセミナーに参加したのはいいが、帰宅後、妻からの質問に答えられず、「何を聞いてきたの!」と、こっぴどく叱られた経験がある。

「妻と夫で知りたい情報は違います。夫がセミナーで聞いたことを妻に説明するのは至難の業なので、そこで齟齬(そご)が生じると定年後、溝が埋められないまま過ごすことになってしまいます」

 そうアドバイスするのは、『お金・仕事・生活…知らないとこわい 定年後夫婦のリアル』(日本実業出版社)の共著者で、確定拠出年金アナリストの大江加代さん。

 タロウさんが退職時に「全部でいくら資産があるのか」妻に説明できないで、しどろもどろになったのはワケがある。

 社内預金制度や積み立て制度、財形貯蓄など、妻に内緒で蓄財してきた資産を“へそくり”にして「老後の自分だけのお小遣いに」と計画していたからだ。

 しかし、「これらも大事な老後資金の一部なので、嫌でも白日のもとにさらさなければなりません」と言うのは、夫で経済コラムニストの大江英樹さん。英樹さんが定年退職したとき、退職一時金を除く預貯金は150万円しかなかったという。

次のページ