グリコの有価証券報告書に記載された平均給与は836万円。同業他社である森永製菓の803万円、カルビーの747万円と比べても高い。周囲に合わせるのであれば、給与が下がる方向にいくとみるのが自然だ。
実際、年俸レンジ給は従来の固定給の水準に比べて下振れ幅が大きい。現在の役職が重要でないと判断され、低いグレードを割り当てられれば、従来と同じ仕事でも給与は減る。給与が上がった者がいる一方で、下がった者も続出しており、事前の説明から間もない性急な施策に社員の間で不満が噴出している。
●牧歌的社風に外部人材重用で急進的改革
人事や給与制度は社員の生活やモチベーションに直結する。説明を尽くし、展望を共有できなければ不信感を生むだけだ。
だが、社員の不満は人事制度に対してだけではない。ここ数年来の経営側の改革意識が社員の意識とずれ、社内に大きな不協和音が生じている。
グリコはここ数年、経営の合理化施策を推進してきた。製造工場の削減や、採算性の低い商品の削減と主力商品への集中などで、2013年3月期に1.5%だった営業利益率を、17年には6.9%へと大きく改善させた。
“丼勘定”だった従来の経営から、数字を明確に追求する仕組みに変えた。いわば教科書的な改革であり、方向性が誤っているわけではない。
ただ、愛社精神が強く、牧歌的な社風だけに、あたかも外資企業のような急進的な改革に戸惑う社員は多い。経営改革の中心役である江崎悦朗専務自身が、信頼を置く外部人材を積極的に登用することもあつれきを生んでいる。