この7月、教育の分野で圧倒的な実績を誇る2人がそれぞれ新刊を出版しました。1冊は、都立中高一貫校受験で業界トップの実績を誇るena学院長の河端真一氏による、『3万人を教えてわかった 頭のいい子は「習慣」で育つ』。もう1冊は、4人の子どもを東大理科3類に入学させ、現在は中学受験塾・浜学園のアドバイザーを務める佐藤亮子氏の『佐藤ママの子育てバイブル 三男一女東大理3合格! 学びの黄金ルール42』。新刊の発売を記念して2人による対談が実現。話題は勉強のこと、親の役割、これからの教育など多岐にわたりました。2回に分けてお届けします。
●自活できる社会人にするため 最低限の学力を身につけさせるのは親の仕事
河端 佐藤さんの本を読むと、いちいち納得させられますし、私の本で書いたことと近い部分も多々あります。「テストで1点を上げる努力を甘く見ない」というのも共感しました。
佐藤 「子育てとはテストの点数を上げること」とシンプルに考えればいいと思っています。「人間性」とか「生きる力」とか言い出すと、何を目指していいかわからなくなる。無人島でサバイバルするわけじゃないんですから。眠たい、めんどくさい、スマホ触りたい……そこを我慢して勉強して、テストで1点でも多く点を取る。そうすることで自制心や計画性が養われるし、努力する大切さを学ぶ。点数を上げることこそが、生きる力を総合的に養う方法だと思います。
河端 生きる力というのは、私は経済的に自立する力だと思うんですよね。子どもたちはいつまでも親に頼ってはいられないわけで、いずれ自分でお金を稼がなきゃいけない。しかし、いざ社会に出たときに、漢字が書けない、基本的な計算もできないでは……。誰かに責められることはないかもしれないけど、いい仕事はもらえないでしょう。そうなって一番困るのは子ども本人です。
佐藤 私は、子どもに最終的に必要なのは「自活」と言っています。稼いで食べていける状態ということ。小学校の漢字も書けない人が、社会に出て食べていけるのかっていう話ですよ。だから受験しようがしまいが、小学校までの勉強をきちんと身につけさせるのは、最低限の親の役割だと思います。
河端 本のなかでは、お嬢様の勉強時間を確保するために、佐藤さんがお風呂で身体を洗ってあげて、髪の毛も乾かしてあげたというエピソードがありました。ああいうところが、私はすごくいいと思うんですよね。「立っているものは親でも使え」でいいんです。お互いが大変なときに手を差し伸べてあげられるというのは、親子として、あるいは人間としてのあるべき姿だと思います。
佐藤 「そこまでするんですか?」と驚く人もいますが、そこまでも何もない、どこまでも手をかければいいんです。子どもがマザコンになると心配する人もいるけど、とりあえず入りたい大学に入れさせて、万が一マザコンになったら、そのとき考えればいいって言っています。
河端 経済的自立、佐藤さんが言うところの「自活」の基盤を作ってあげなければならない。そのために親としては、子どもにどこまでも手をかける。それをやらなかったら本当に、子どもはどうなるのか。30歳になっても無職という人が世の中にたくさんいますが……。
佐藤 親は心配で死ぬこともできないですよ。一定の学力を身につけて社会に出て、きちんと自活してほしいというのが親の願いですね。
●これからの英語教育において 本当に「聞く」「話す」は必要か
河端 2020年度から大学入試制度が大きく変わることが話題になっています。佐藤さんはどのようにお考えですか?
佐藤 英語でリスニングが重視されるようになるなんて、たいした変化じゃありません。「おたおたするな」と思っています。大事なのはやはり数学・国語です。だから今の小中学生も、基本である読み・書き・計算を鍛えるべきです。