今年の夏は暑さがいっそう厳しく、先月の文月より酷暑となっている日本各地。いつ終わるとも知れない暑い日々が続いていますが、旧暦のうえでは、この葉月に「立秋」を迎えます。うだるような熱気と湿度の中に、そこはかとない涼を感じるのが、日本人の季節感。来る秋に思いをはせつつ、体調に気をつけて、この月を乗り切っていきましょう。

葉が色づくから「はづき」?稲穂が実るから「張り月」?

八月の古名は「葉月」。日本書紀にこの名、「はづき」がまず出てくるのですが、その由来には諸説あるようです。最も有力なのが、樹木の葉が落ち始める頃だから「はづき」だとか、黄色く色づく頃だから「はづき」になったといわれる説。このほか稲穂と関連づけ、稲が実る時期「穂張り月」「穂発月」を略して、「はづき」となったという説も。さらに、台風が多いことから「南風(はえ)月」。雁が飛んでくることから「初来月」ともいわれるようですが、由来はともかく、一年中で最も緑が濃い八月に、「葉月」という名はふさわしい気もします。今年も、炎天の陽ざしに萬木の緑がくっきり鮮やかに燃えたつ季節の到来です。

「田の実」転じて「頼み」。8月1日「八朔」は感謝を伝える日

旧暦八月朔日(ついたち)「八朔(はっさく)」は、別名「田の実の節句」。「田実(たのむ)の祝い」とも呼ばれます。その昔、農村などでは、新しく実った初稲を主の家や知人などに贈り、豊作祈願などを行っていたとか。この風習がいつしか武家社会にも広まり、鎌倉後期より八朔の儀が行われ始めました。これは、主従の間で贈答品を交わす儀式。諸大名や寺社から鎌倉公に贈答品を献上し、鎌倉公の方からも献上者に対して御礼の品々が贈られていたそうです。さらに、江戸時代には幕府の重要な儀式ともなり、現在でも、全国各地で八朔祭や八朔相撲が実施されています。また、京都の祇園では、芸妓や舞妓が踊りや三味線の師匠や茶屋へ挨拶に回るしきたりも。稲の実りを田の神に感謝していたものが、「田の実」転じて「頼み」となり、お世話になっている相手方へ感謝を伝える日となったのでしょうか。このしきたりにならって本日は、周囲の方に改めて感謝し、ありがとうと伝えてみてもいいですね。

8月7日「立秋」からは残暑。涼を呼ぶ残暑見舞いを送りましょう

二十四節気では8月7日に「立秋」を迎えます。夏のまっただ中に、旧暦の上では秋に入るというのは、少し不思議な気がするかもしれません。しかしながら、夏は最も涼を求める季節。そこはかとなく感じられる秋の気配や、涼しいという感覚を求めるのは、この時節ならではです。
冷えた麦茶の一杯に、チリンチリンと鳴る風鈴の音色に、白と藍に染められた浴衣に、一瞬の涼しさを感じるときこそが、葉月ならではの季節の趣。涼を呼ぶ絵柄や色合い、言葉を添えて、大切な方に便りを送るのも素敵な夏の楽しみ方ですね。立秋以降は「暑中見舞い」から「残暑見舞い」とになり、「残暑」というだけで、暑い日々もなんとはなしに残り少なく感じられます。年々苛烈になる酷暑だからこそ、互いにいたわりあって過ごしたいもの。涼を呼ぶ気持ちを伝え合い、積極的に季節を先取っていきましょう。
鎌倉の鶴岡八幡宮では、立秋の日に夏の無事に感謝し秋の訪れを奉告する立秋祭が行われます。宵の参道にはぼんぼりが灯り、神前には鈴虫が供えらるという、古都の夏の風物詩です。

また、朝顔をはじめ芙蓉や木槿など、青空のもと爽やかに咲く一日花が多いのも夏ならでは。一日咲いて、すぐにしぼんでしまうのですが、次々と花開いて私たちの目を楽しませてくれます。