クロアチア戦で先制ゴールを決めた前田大然(photo PA Images/アフロ)
クロアチア戦で先制ゴールを決めた前田大然(photo PA Images/アフロ)
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 サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会で、優勝経験国のドイツとスペインに勝利した森保ジャパン。敗退した後も現地で世界の戦いを取材し続けてきた記者が改めてその戦いぶりを振り返った。2022年12月26日号の記事を紹介する。

【写真】脚光を浴びた田中碧と三笘薫が抱き合って喜ぶシーン

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「奇妙な試合だった。日本がドイツに勝つとは誰も思っていなかったし、ドイツは失点した以外の時間はとてもいいプレーをしていた。日本はあまりいいプレーではなかったが、終盤の9分間で2点を取った」

 現地でドイツ戦を取材していたスペイン人のパブロ・メリアン記者は「日本の勝利はどうやっても説明できない」と苦笑いを浮かべた。

 フランス最大のスポーツ紙「レキップ」のビンセント・ドゥルク記者も、冗談と皮肉を交えながら次のように語った。

「日本は組織立っていて、よく走るし、自己犠牲の精神もあった。ただ、サッカーをしていたかというとどうかね(笑)。日本がドイツとスペインに勝利したのは質の高さを示したとも言えるが、そのサッカーは見ていて楽しいかと言えばそうでもない。日本が対戦相手にとって戦い難いのは確か。ただ、コスタリカに敗れた通り、日本が強いのは『ボールを持っていないとき』だけ! ゲームを支配する役割を負わなくていいときは強い。すべてのことを理詰めで考えるのが正解とは思えないが、つまりそれは相手に合わせる戦いだからだ」

 海外メディアには日本の戦いぶりは不可思議に映ったようだ。

スペイン戦の試合後、勝ち越しゴールを決めた田中碧(上)とアシストした三笘薫は抱き合って喜んだ。2人は幼なじみでもあることから、このシーンは脚光を浴びた(photo アフロ)
スペイン戦の試合後、勝ち越しゴールを決めた田中碧(上)とアシストした三笘薫は抱き合って喜んだ。2人は幼なじみでもあることから、このシーンは脚光を浴びた(photo アフロ)

■中途半端な戦いに終始

 クロアチア戦は課題だったセットプレーに変化を加え、FW前田大然(だいぜん、25)のゴールで先制したまではよかった。ただ、後半に同点とされた後は疲労の色が濃く、PK戦には自信を持っていたクロアチアの術中にハマるように中途半端な戦いに終始したように感じた。

 PK戦でクロアチアの1番手を務めたMFブラシッチ(25)は試合後、こう話していた。

「試合前の2日間、PKをかなり練習した。自信はあったし、監督に『自分がいきます』と叫んだら、何も言われなかった」

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