クロアチアのダリッチ監督は、PK3本を止めたGKリバコビッチ(27)をこう評した。
「試合前のPK練習で、彼は好セーブを連発していた。PK戦になれば、彼が止めてくれると確信していた」
日本では、PKキッカーの順番の立候補制が正しかったかどうかという議論などもあったようだが、それ以前にPK戦に対する準備は万全だったのか。
4年に1度のW杯で頂点に立つのは1チーム。優勝国以外は必ずどこかで敗れるわけで、勝ち方以上に問われるのは負け方と言ってもいいかもしれない。今大会で序盤の最大のサプライズとして驚きを呼んだのは、サウジアラビアが初戦でアルゼンチンを下したことである。その後サウジアラビアはポーランド、メキシコに連敗して1次リーグで敗退したが、彼らの戦いが評価されたのは堅守速攻だけでなく、目指してきたボールをつなぐスタイルを前面に出しながら勝負した姿が見ている人に訴えたからだろう。
アフリカ勢として初のベスト4に進出したモロッコの戦い方は、スペインの名門クラブ・バルセロナや、スペイン代表がかつて得意とした「ティキ・タカ(細かいパスをつなぎながら攻撃するスタイル)」時代の終わりと、相手に圧力をかけて高い位置でボールを奪う「プレッシングサッカー」が全盛期であることを改めて印象づけた。
■モロッコの負けっぷり
その意味で、ボール保持率を上げることを目指してきた日本代表が賢くプレスをかけてドイツとスペインに勝ったことはどこか皮肉めいた結果だったとも言えるが、今後どういった方向を目指すべきかを考えるにはいい機会になったのではないか。
W杯までの契約となっていた森保監督の後任問題については様々な報道が飛び交っている。誰になるかは不明だが、それよりもこれまでの過程や今後目指すべき道をはっきりさせることが先決だ。
準決勝で、モロッコは前回王者のフランスに果敢に挑み、力負けした。結果は残念だったが、スタジアムは負けてなお喝采ムードだった。そんなモロッコの負けっぷりを見て、日本代表の戦いぶりを思い返すと、私の心がさらにモヤモヤしてきたのは気のせいではないだろう。(ライター・栗原正夫)
※AERA 2022年12月26日号より抜粋