AERA2022年12月26日号より
AERA2022年12月26日号より

 2012年のイトーヨーカ堂を皮切りに、グループ4社の全店舗で加工食品を対象に2分の1ルールに切り替えているセブン&アイ・ホールディングス。同社は変更理由について、「小売り側からメーカー、ベンダー(仕入れ先)への返品等が減り、社会全体としての食品ロス削減に大きな効果があると期待できるため」と回答。食品ロス削減以外の効果については、メーカーや仕入れ先の納品時の物流効率化を挙げた。

 石川さんによると、一般的には納品期限が緩和されると、小売業者が物流業務を委託している「物流センター」からの返品が減るため、倉庫内の追加的な業務負担が軽くなるメリットがあるという。

「倉庫で働いている人は小売業者ではないのですが、委託費用にはね返るため、そこで少し還元されるケースもあると聞きました」(石川さん)

 運送・卸業者を含むサプライチェーン全体でのコストの削減は、結果的に小売業者にも波及する。つまり、納品期限の緩和はコスト削減、ひいては物価高の緩和につながるという構図が成立する。

■ルール混在の課題

 とはいえ、石川さんはこんな見解を示す。

「賞味期限内食品の消費量が増え、全体の供給料が増えれば販売価格が下がるというのは、長い目で見た経済理論的にはその通りだと思います。ただ、流通の世界は複雑ですから、直接的に今の物価高の抑制につながるかは何とも言えません」

 小売店舗への納品期限を「2分の1」に緩和する事業者が増えても課題は残る。納品期限はもともと小売業者の規模やメーカーによって異なるうえ、「3分の1」と「2分の1」が混在する現状では、より複雑な商品管理が必要になるため物流業者の負担が増すのだ。

 一方、2分の1ルールを先行導入している小売業者にとっては不公平感もぬぐえない。

 セブン&アイ・ホールディングスは2分の1ルールについて「小売業界全体で実施しなければ、実施していない企業には販売期限の長い商品が納品され、実施している企業には販売期限の短い商品が納品されてしまう懸念があります」と吐露する。

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