物価高が深刻化するなか、食品業界の「3分の1ルール」の見直しに改めて注目が集まっている。値上げの緩和効果も期待できるという。AERA 2022年12月26日号より紹介する。
【賞味期限6ヶ月の例】「3分の1ルール」の見直しでどう変わる?
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9月9日に開かれた政府の「物価・賃金・生活総合対策本部」の会合。野村哲郎・農林水産相が打ち出したのは「期限内食品ロスの最小化対策の強化」だった。野村農水相は同月29日の食品業界関係者らとの意見交換会で、「期限内食品はすべて消費者へ」と題する異例の大臣メッセージを発表。この中で、「食品原材料価格が高騰する中、コストの削減と値上げ幅の緩和を図っていくためには、期限内食品を消費者に売り切っていく」ことなどを挙げ、3分の1ルールの見直しなどへの協力を求めた。
3分の1ルールは、賞味期限の迫った商品が店頭に並ぶのを避けるため、スーパーなどの食品小売事業者が取引事業者との間で設定する日本独特の商習慣だ。例えば、賞味期間が6カ月の商品だと、卸業者は製造日から2カ月以内にスーパーやコンビニエンスストアに納品しなければならない。
■緩和取り組みは急増
納品が遅れると賞味期限の「3分の1」を過ぎてしまい、卸業者からメーカーに返品されたり廃棄されたりする。このため、小売事業者によっては納品期限の基準を緩めた「2分の1ルール」の導入も進んでいる。
農水省が主にスーパーを対象にした調査では、納品期限緩和に取り組む小売事業者は2019年3月に39事業者だったのが、今年10月には240事業者となり売上高ベースで調査対象の5割強に上っている。大手コンビニや総合スーパーが中心だったのが、地方の食品スーパーにも広がっているという。
近年増加している背景について、流通経済研究所の石川友博・上席研究員は「SDGsの影響が大きい」と指摘する。
「SDGs推進を企業の使命と考え、専門部署を設置する企業も増えています。そうした小売業者が着目するのが、食品ロス削減につながる納品期限の緩和です」